主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2024年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2024/03/19 - 2024/03/21
都市ヒートアイランドの実態を解明するために衛星リモートセンシングによる地表面温度が用いられることが多いが、衛星データでは日中は市街地より住宅地の方が高温であることも多く、衛星通過時のみの温度では市街化による影響の実態を把握し難い。そこで本研究では、衛星観測データと一次元熱収支モデルを結び付け、シミュレーションにより表面温度分布の日変化を解析した。
本研究では東京都心部を対象とし、平野・一ノ瀬(2014)と概ね同様のシミュレーションを500mグリッドレベルで行った。これにより、平均的な温度帯が近い時刻でも、午前と午後では明らかに分布形が異なっていることなどの興味深い結果を得た。これは住宅地と市街地の熱容量の違いによるタイムラグの影響であると考えられる。太陽同期準回帰軌道の人工衛星では日中のデータ取得が午前中であることが多いが、市街地と比較して熱容量が小さい住宅地では午前中の昇温が早く、結果として住宅地と市街地の温度差が大きく生じている可能性が高い。したがって衛星観測された表面温度を日中の代表値として用いる際には、こうしたバイアスについて留意する必要がある。