日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P005
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小松市今江潟の完新世における地形発達過程
*髙橋 未央小岩 直人樫田 誠
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抄録

石川県小松市周辺には,加賀三湖と呼ばれる海跡湖(木場潟,今江潟,柴山潟)が存在する。加賀三湖は,北東-南西方向に分布する海成段丘面や3列の沿岸州によってそれぞれ隔てられている。これらの沿岸州を本研究では,内陸側から沿岸州Ⅰ,沿岸州Ⅱ,沿岸州Ⅲとする。これまで発表者らは,木場潟周辺において得られた既存ボーリング資料,ボーリングコアをもとに完新世における地形環境復元を試みてきた。今回,新たに,沿岸州Ⅱの内陸側と北端付近の2地点でオールコアボーリングを実施し,得られた試料の諸分析から地形発達過程を検討した。

 沿岸州Ⅱの内陸側に位置するMOコアは,掘削深度24mで,2つのユニットに区分される。下位から,ユニット1(U1)は,シルト~粘土で構成され,最下部には黒色と白色を呈する縞状構造の特徴があり,上部に含まれる木片から3724-3614 calBP(深度20.18m)の年代値が得られた。上位のユニット2(U2)は,中粒砂~粗粒砂で構成され,中部に含まれる木片の年代値は,3980-3843 calBP(深度10.58m)を示した。

 沿岸州Ⅱの北端にあり,河口から約2㎞に位置するUYコアは,掘削深度23mで,ユニット1~ユニット4(U1~U4)の4つに区分される。下位のU1は,シルト~粘土で構成され,その下部はMOコアと同様に,縞状構造を呈す。上部に含まれる木片から7159-6941 cal BP(深度16.45m)の年代値が得られた。U2は,中粒砂と粘土の互層からなり,その上位に砂礫がみられ,上方粗粒化を示す。下位の中粒砂と粘土の互層に含まれる木片から7160-6961 calBP(深度13.15m),2065-1925 calBP(深度10.50m)の年代値が得られた。U3は,細粒砂~中粒砂,シルト~粘土が堆積し,貝殻片を多く含み,上位のシルト~粘土に含まれる貝殻片は,870-797 calBP(深度5.39m)の年代値を示す。U4は,淘汰の良い細粒砂となる。

 以上の結果から,完新世における今江潟周辺の地形環境変遷が以下に推定される。両地点のU1にみられた黒色を伴う縞状構造の層は,還元的な環境で堆積した内湾性堆積物と考えられ,約7,000 cal BP前後にMO地点からUY地点にかけて内湾が形成され,その沖合には,内湾を外洋から隔てる地形が存在していたと推定される。両コアは,この内湾性堆積物を砂層および砂礫層が被覆している。これらは,現在の沿岸州Ⅱを構成する堆積層であると考えられ,MO地点では約4000 cal BP前後,UY地点では約2000 cal BP前後に,沿岸州Ⅱの形成開始が推定される。その後,UYコアでは,貝殻片が産出し,上方細粒化するU3の堆積から,UY地点において湖沼などの環境が870 cal BP前後に形成されたと推定される。特に,U3上部のシルト~泥が堆積した時代は,UY地点に形成された水域は閉塞していた可能性が高く,UY地点よりも海側に,沿岸州(現在の沿岸州Ⅲ)が発達していたことが示唆される。UYコアの最上位のU4は,砂丘砂と考えられ,この砂層が堆積した時代には,UY地点は離水していたと推定される。

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