近年は情報技術の発展や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によりテレワークの導入が注目されており,それに伴うCO2排出削減も期待されている。本研究では,社会全体での移動抑制によるCO2排出削減ポテンシャルを把握するための基礎研究として,新型コロナウイルスの感染対策時期におけるCO2排出量の変化を評価した。この結果,乗用車・二輪車をはじめとする運輸部門の項目は減少,家庭部門は増加していることが示された。これらはいずれも外出自粛やテレワーク化によるものであると考えられる。一方,業務部門に該当する項目では,サービス業などの施設閉鎖や営業時間短縮を伴う業種では減少していた。これに対し,事務所用途がメインの業種は変化が小さく,テレワークの効果による減少と換気による空調負荷の増大などの両者が相殺されている可能性がある。実際にはこの時期のデータにはテレワークや諸活動・会合等のリモート化といった今後も定着しうる変化と,一時的な諸活動の自粛の効果と両方が含まれる。脱炭素社会に向けたライフスタイル設計のためにはこれらを区別する必要があり,今後の継続的なデータによる解析を進める予定である。