日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 411
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富士山における観光プロモーション活動が外国人登山者の行動に与える影響
*薛 子怡
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抄録

富士山は日本最高峰であると同時に、豊かな文化・信仰の背景を持ち、古くから絵画や文学などで重要な位置を占めてきた。世界文化遺産として登録されていることもあって、現在多くの外国人登山者が訪れるが、その登山リスクについて十分な理解しないまま挑む事例も少なくない。本研究では、観光プロモーションが外国人登山者のリスク認識および行動に与える影響を、プロモーションと実際の登山行動との間に存在するギャップを明らかにすることを通じて検討する。そのために、富士山に関連する観光プロモーションの資料を収集し、吉田口登山道を中心に外国人登山者および登山ガイドや山小屋関係者へのインタビュー調査を実施した。分析の結果、プロモーション内容が外国人登山者が有する登山リスクの認識に大きく影響していることが示され、特に「観光地」としてのイメージが富士登山の難易度を過小評価させる一因となっていることが明らかになった。また、2024年の新規制により、「弾丸登山」者が大幅に減少した一方、ゲート閉鎖直前に登山を開始する者や軽装の登山者の問題が依然として残っている。本研究の成果は、山岳地域における登山をめぐる観光のリスク認識のあり方について新たな視点を提供するものである。

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