日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 412
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デジタル時代におけるインバウンド旅行者の訪問動向と地域特性の分析
― 太宰府天満宮を訪れる中国語圏観光客のアンケート調査を通じて ―
*楊 楠
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抄録

近年,オーバーツーリズムが問題視される中で,訪日観光客の分散化を進めるため,日本の多様な地域の魅力を発信することが重要な課題となっている.特に,SNSや口コミサイトなどのデジタルプラットフォームを活用した観光地の情報発信が集客に与える影響を明らかにすることは,現代の観光振興戦略として不可欠である.本研究では,台湾,中国本土,香港から訪日する観光客の訪問動向と,これらの地域間における観光行動や動機の違いを探ることを目的とする.研究対象地域として太宰府市を選定し,特に太宰府天満宮を訪れる中国語圏の観光客を対象にアンケート調査を実施した.調査結果を基に,特にSNSが旅行計画や再訪意欲に与える影響を分析した.台湾と中国本土からの観光客はSNS(Instagramや小紅書など)に強く依存し,旅行前にインフルエンサーの投稿や旅行系ブログを参考にする傾向が強かった.一方,香港からの観光客は公式メディアや地元ブログを重視し,SNSの影響は相対的に弱いことが明らかとなった.また,太宰府市に再訪する意欲が高い観光客は,SNSを通じて自身の旅行経験を共有したいという意欲が強く,再訪時にはSNSへの投稿が顕著であった.これらの結果から,地域ごとの文化的・社会的背景が観光行動に影響を与えることが示唆され,今後の観光振興戦略におけるSNS活用の重要性が浮き彫りとなった.

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