2020 年 19 巻 p. 19-46
中国雲南省怒江傈僳族自治州蘭坪白族普米族自治県の普米族(以下蘭坪プミ族と表記)は「七月半」と呼ばれる、死者の魂を迎えてともに過ごし、また送り出すという儀礼を行う。この儀礼は同じプミ族でも蘭坪以外の地域、例えば寧蒗のプミ族では見られないが、蘭坪における他の民族、例えば白族でも行われており、七月半は蘭坪における死者儀礼の特徴の一つと言ってよい。ちなみに、白族は蘭坪以外の地域でも行っている。蘭坪プミ族の七月半の最大の特徴は、死者の親族の女たちによって哭き歌が歌われることであり、これは蘭坪地域の白族(以下ペー族と表記)の七月半では確認されず、また蘭坪以外の地域のペー族でも今のところ確認されない。哭き歌の内容は、例えば「あなたがいなくなってから私たちはどうしたらよいのかわかりません」というような生者の術なさなどがあり、これは蘭坪プミ族の葬儀でも確認される歌表現である。