アジア民族文化研究
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  • 中国貴州省東南部のミャオ族と漢族の村の事例から
    佐藤 若菜
    2021 年20 巻 p. 1-17
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2024/05/01
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     ミャオ族と漢族が暮らす中国貴州省東南部清水江流域にある調査村(S村)において、筆者は「(漢族から)ミャオ族になった」、「(ミャオ族から)漢族になった」という語りを耳にした。はたして「ミャオ族になる」「漢族になる」とはどういった事態を指し、なぜ彼らは「民族」を変更することを選択したのだろうか。本稿では、2009年3月から2011年5月までに貴州省黔東南ミャオ族・トン族自治州施秉県南部で実施した調査をもとにこれらの点を考察した。

     結論では、「ミャオ族になる」「漢族になる」という営みには、単に言語や身なり、生活様式の変更にはとどまらない内実があることを指摘した。具体的には、変更した民族の婚姻ネットワークに参入することで次世代の配偶者を確保したり、儀礼のやり方を変えることでそこに参加する人々を確保していたのである。

  • 伊藤 悟
    2021 年20 巻 p. 19-40
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2024/05/01
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     タイ王国北部にはソー(so)という掛け合い歌の職能芸能があり、現在も歌師たちは仏教儀礼や冠婚葬祭に招かれて芸を披露している。本稿はソー芸能がどのような試行錯誤によって現在まで職能芸能として継承されてきたのか、チェンマイ県ビーソー伝承協会発足の前後の芸能実践に着目し、生じた変化の特徴を考察した。協会発足以前のソー芸能はグループごとに歌師らの囲い込みが起きており、相互の交流や連携が停滞し、また従来の徒弟制度の伝承形態も崩壊していた。この問題を解決するために、伝承協会は師の精霊を合同で祭祀するコミュニティを組織化して歌師たちの交流を促進した。合同儀礼の実施は副次的に伝承の場として機能した。歌師たちは相互連携を深め、徒弟制度の種々の慣例を変え、文字テクストや複製メディアを利用して歌詞を共有化し、芸能実践の革新に成功した。

  • 真下 厚
    2021 年20 巻 p. 41-43
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2024/05/01
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  • ――壮族の掛け合いうたにおける識字者と非識字者の表現の差異――
    手塚 恵子
    2021 年20 巻 p. 45-62
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2024/05/01
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     口頭構成法によらない口承文芸において、リテラシーには見られないオラリティ特有のものが見られるのか、またオラリティとリテラシーの間に不可逆的な断層が存在するかを、モノローグで語られる英雄叙事詩と同様に古い歴史を持つと考えられる口頭構成法によらないダイアローグ型の口承文芸である、壮族の掛け合いうたにおいて検討した。

     壮族の掛け合いうたを書き起こした「春の歌」における失敗作は、非識字者によってうたわれたものであり、その要因は上下のうたの「つながり」に失敗したことによる。一方、識字者は「つながり」に失敗することはなかった。このことは、壮族の掛け合いうたにおいて、オラリティにおいては脆弱であるが、リテラシーにおいては強靭となる思考や表現のかたちがあることを示唆している。また「つながり」を重要視する他の文芸においても、同様なことがみられる可能性があることを、日本の連歌が示しているといえよう。

  • ――文字による伝播と声の現在性――
    遠藤 耕太郎
    2021 年20 巻 p. 63-100
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2024/05/01
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     中国の辺境で国家を作り上げた古代日本に、『文選』や『芸文類聚』などの漢詩とともに中国から七夕伝説が伝播した。七夕の詩宴ではこれらの漢詩を模倣した七夕詩が作られたが、その向こうを張って行なわれた七夕宴では、七夕のストーリーや登場人物の設定を脱構築し、恋する男女の立場に立って歌うという特徴をもった人麻呂歌集七夕歌が作られた。

     本稿では中国中原から伝播したストーリー(『柳蔭記』)をもとに歌垣歌を創作する雲南省ペー族の人々の技術を参考にしながら、人麻呂歌集七夕歌の脱構築という方法がどのように獲得されていったのかについて論じる。

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