アジア民族文化研究
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Print ISSN : 1348-0758
秘儀としての大嘗祭
―曖昧なる天皇の超越性―
岡部 隆志
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2020 年 19 巻 p. 223-241

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抄録

 七、八世紀に掛けて天皇は神という超越的存在となったが、その超越性の実質は曖昧なるものであった。その曖昧性は大嘗祭において確認できる。大嘗祭は、新嘗儀礼と天皇の皇位継承儀礼(神性の継承儀礼)の二重的性格を持つが、何故二重性なのか合理的に説明できない。また、天皇も祭る者でありながら祭られる神でもあるという曖昧な性格を持つ。実は、こういった曖昧性にこそ大嘗祭という祭祀の本質がある。アミニズム的自然神を基層に持つ神々の神性を、近代的律令国家を超える天皇の神性へと創り上げていくとき、どうしても曖昧さを抱え込む。その具体例が大嘗祭なのである。大嘗祭は秘儀であることが重要であった。何故なら、その曖昧性を、触れ得ぬ神秘性(秘儀)で覆うことによって、天皇の超越性を演出したからである。従って、天皇の超越性は曖昧性を実質とする。それは現在においても変わってはいない。

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© 2020 一般社団法人 アジア民族文化学会
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