抄録
目的:本研究は,可撤性部分床義歯(RPD)の装着,欠損形態の相違が残存歯,特に直接支台歯に与える影響を明らかにすることを目的とした.
方法:東北大学歯学部臨床実習においてRPDを装着後,約5年経過した患者67名をリコール調査した.本研究では,それらのなかで再製作使用・不使用継続患者を除外した継続使用患者37名,RPD48床(上顎26床,下顎22床)の支台歯137歯(直接支台歯81歯,間接支台歯56歯),支台歯以外の残存歯219歯,計356歯の残存歯を分析対象とした.支台歯はさらに,遊離端欠損部に隣接する遊離端直接支台歯(41歯)と中間欠損部に隣接する中間直接支台歯(40歯)に2分して,以下の1~4の項目についてRPD装着時とリコール診査時(5年経過後)における比較検討を行った.1.O’LearyのPlaque Control Record(PCR),2.歯周ポケット深さ,3.Millerの動揺度,4.歯槽骨吸収度.統計解析には, Wilcoxon signed rank testを使用した.
結果:PCR,ポケット深さおよび歯槽骨吸収度をRPD装着時とリコール時で比較すると,リコール時において支台歯および非支台歯とも有意に悪化していたが,動揺度は支台歯において有意な変化は観察されず,非支台歯では改善していた.ポケット深さおよび歯槽骨吸収度においては,中間欠損の直接支台歯では変化が認められず欠損形態との位置関係が関与していた.
結論:歯周組織状態の経年的変化として,動揺度に関しては変化が認められなかったものの,PCR,ポケット深さおよび歯槽骨吸収度に関しては悪化していた.