抄録
症例の概要:66歳女性.上顎前歯部の疼痛と,上下顎部分床義歯の外観不良を主訴に来院した.上顎前歯は歯根破折しており,追補された上顎前歯の人工歯排列位置は唇側に偏位し,外観障害を認めた.残存歯の咬耗や挺出状態および顔貌などから咬合平面の不正および低位咬合と診断し,治療用義歯とプロビジョナルレストレーションを利用して咬合高径および外観の回復を図った.適正な咬合高径と残存歯による咬合支持を確保した最終補綴装置を装着したが,2年5カ月経過時に7の挺出および遠心転位より抜歯に至ったが,その後は良好に経過している.
考察:7は隣接歯と固定するか,対合歯との十分な咬合接触により長期保存できたと悔やまれた.
結論:適切な咬合平面ならびに咬合高径を回復し,患者の希望に添った人工歯排列によって,機能・外観とも満足が得られる義歯が装着できた.