日本補綴歯科学会誌
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◆企画:九州支部学術大会「栄養・運動と全身の健康の架け橋を担う歯科補綴」
栄養・運動と全身の健康の架け橋を担う歯科補綴
─咀嚼機能回復と保健指導の組み合わせは,体組成と代謝指標を改善する─
武内 博朗花田 信弘
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2019 年 11 巻 3 号 p. 206-214

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抄録

 歯を喪失すると咀嚼機能が低下する.咀嚼機能が低下した状態では,糖質の摂取量が増加する.一方で低GI食品,タンパク質,抗酸化物質,食物繊維,ビタミン群,ミネラル群などの摂取量が低下する.ブドウ糖負荷の増加およびタンパク質エネルギー低栄養の状態はメタボリック症候群やフレイル,さらには非感染性疾患Non Communicable Diseases(NCDs)の発症リスクを上昇させる.

 本稿は,歯科補綴治療による咀嚼機能回復と栄養指導を中心とする保健指導の集中運用が体組成や代謝指標にもたらす健康増進効果について症例を提示し紹介する.

 大臼歯欠損者71名を対象に歯科補綴治療介入前後の咀嚼機能値を評価した.また,71名の症例のうち歯科補綴と同時に保健指導を実施した25名について,歯科補綴治療介入前および保健指導90日後に体組成,血圧測定,血液検査を行い,体組成・代謝について数値を比較評価した.

 歯科補綴による咀嚼機能向上が71名の全症例で認められた.保健指導を実施した25名の全症例で基礎代謝基準値(骨格筋量),BMI,体脂肪率,内臓脂肪レベル,タンパク質充足率が改善した.HbA1cは保健指導群のうち測定した7例全例で改善した.

 咀嚼機能低下者におけるNCDsの発症予防,重症化予防のためには,歯科補綴による咀嚼機能回復と同時に行う保健指導が有効と考えられた.

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© 2019 公益社団法人日本補綴歯科学会
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