日本補綴歯科学会誌
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原著論文
実験的チタン製アバットメントに施した陽極酸化処理がインプラント上部構造に用いる高透光性ジルコニアの色調に及ぼす影響
土橋 佑基山本 勝己横上 智佐藤 絢子一志 恒太佐藤 博信
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2020 年 12 巻 2 号 p. 150-157

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抄録

目的:陽極酸化処理したチタン製カスタムアバットメントが上部構造に用いる高透光性ジルコニアの色調にどのような影響を与えるか検討することである.

方法:直径10 mm,高さ10 mmの円柱形状のチタン合金を用いて無処理(gray)と陽極酸化処理(gold およびpink)の3種類の試料を実験群として製作した.対照群としてレジン試料を製作した.厚さ0.5 mmの高透光性ジルコニアを試料とし,セメントペーストにはユニバーサル色とオペーク色の2種類を用いた.アバットメントとジルコニアにペーストを介在させ非接触型歯科用分光光度計を用い測色試験(L*, a*, b* 値)を行い,これらの値から対照群との色差(ΔE)を算出した.

結果:ユニバーサル色を用いた時の色差(ΔE)は11.61,オペーク色で5.81 を示し,セメント間で有意差(P<0.05)を認めた.オペーク色の色差(ΔE)はピンク色のチタン試料を用いると4.21と最小値を示した.一方で,オペーク色を用いた場合の色調(色相・彩度)の指標であるa* 値はゴールド色で-0.66(緑傾向)を示すなど多様な変化を認めた.

結論:これらの結果より,陽極酸化処理のチタン製アバットメントとオペーク色のセメント使用が高透光性ジルコニアの色調の変化を小さくする可能性が示唆された.また,研究結果のa* 値の変動からアバットメントの色は高透光性ジルコニアの色調に影響を及ぼす可能性があり,ステイン等の色調調整の必要があると思われた.

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