2021 年 13 巻 2 号 p. 126-134
目的:近年,食生活の変化とともに軟食化が進んでいるが,顎関節症に与える影響については未だ明確になっていない.そこで,粉末飼料を用いて飼育することにより,軟食が顎関節に与える影響について,下顎頭の形態と表面性状に着目して検討することとした.
方法:本研究では,寿命が通常マウスの約半分と短く,一生涯を短期間で観察可能な老化促進モデルマウスP8(Senescence-Accelerated Mouse P8:以下SAMP8)を用いた.実験群は,SAMP8を離乳時期にあたる3週齢の離乳群と粉末飼料および固形飼料にて各7カ月齢まで飼育した粉末群と固形群の3群にわけ各群10匹とした.実験では,剖出した下顎頭を実体顕微鏡下にて規格写真撮影を行い,下顎頭表面性状の変化を6つのGradeにて評価するChenの分類を用いて表面性状を評価した.下顎頭の形態については,前後径,幅径,面積,円形度を画像解析ソフトimage Jにて計測した.また,骨塩量について軟X 線を用いて計測した.
結果:下顎頭の表面性状は,Chenの分類による評価では,離乳群で変化はなかったが,粉末群,固形群の順で有意に高い値を示した.形態については,前後径,幅径,面積および骨塩量で,固形群が粉末群および離乳群に比べて有意に大きな値を示した.円形度では離乳群,粉末群,固形群の順で大きな値を示し,離乳群と固形群の間で有意差を認めた.
結論:粉末飼料による飼育では,下顎頭の形態は離乳時期と殆んど変化せず,劣成長の傾向が認められることが明らかとなった.