日本補綴歯科学会誌
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原著論文
パラタルバーの位置の違いが発語時の脳活動に与える影響
片岡 加奈子玉置 勝司小野 弓絵星 佳芳生田 龍平藤原 基
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2021 年 13 巻 2 号 p. 135-145

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抄録

目的:上顎部分床義歯パラタルバーの位置の違いが発語時の脳活動に与える影響について検討することを目的に,パラタルバー装着発語時の違和感を主観的評価(Visual analog scale: VAS)と客観的評価(脳活動データ)から検討した.

方法:発語機能に異常のない25名(平均年齢31.8歳)を対象に前パラタルバー,中パラタルバー,後パラタルバー(以下前PB,中PB,後PB)をそれぞれ上顎に装着した状態で,発語文章1「さくらのはながさきました」,発語文章2「アメリカのミシシッピー」を発語させた.その際,発語時違和感の主観的評価としてVASを用いた.客観的評価として前頭前野の脳活動を用い,この指標として,機能的近赤外線分光法(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)により計測した酸素化ヘモグロビン(Oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(Deoxy-Hb)濃度変化量を用いた.

結果:VAS値は,両発語文章において,後PB装着時に強くなる傾向を示した.一方脳活動は,発語文章1では活動の有意差は認められなかった.発語文章2ではOxy-Hbにおいて中PBの値が大きく,前PBに比べ有意差が認められた.Deoxy-Hbにおいて前PBの値が大きく,前PBと中PB,前PBと後PBにも有意差が認められた.

結論: 主観的な評価は前PB,中PBで同程度であり,後PBが高く,舌運動の阻害の程度を反映した.客観的な評価はパラタルバーの設定位置と発語内容によって異なり,変化した口腔内部の状況に応じて円滑な発声を行うための認知的負荷の強度を反映していると考えられた.

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