2023 年 15 巻 1 号 p. 109-112
症例の概要:患者は上下顎無歯顎の78歳の女性で,義歯を装着すると疲れるとの主訴で来院した.使用中の義歯は舌房が狭く,下顎の顎堤は上顎に対して唇頰側に位置していた.このため,咬合器上で顎堤の対向関係を確認し,右側は交叉咬合,左側は正常被蓋の両側性平衡咬合を付与することとした.人工歯の排列は,作業用模型の歯槽頂の位置を転写するシートを作成し,これを参考に行った.
考察:狭小な舌房に起因する高位咬合感は,交叉咬合排列を適応することで解消され,良好な経過が得られたと考える.
結論:顎堤の左右的対向関係が不良な無歯顎患者に対して交叉咬合排列を適用して機能回復を図ったことで,高い患者満足度が得られた.