目的:厚生労働省の社会医療診療行為別調査をもとに,1996年~2013年の16年間の義歯診療の変化の報告後, 8年が経過し,社会情勢の変化による影響を明らかにするため,2014年から2021年までの8年間の調査を行い,以前の結果と併せて分析を行った.
方法:社会医療診療行為別調査(厚生労働省)の24年間の義歯関連診療細分類ごとの件数から,1)義歯新製, 2)クラスプ,3)バーと補強線,4)修理・裏装の4項目について検討した.
結果:義歯新製件数は2014年以降も減少傾向が続いた.クラスプの総数は,義歯新製数の減少に対応して減少していたが,両翼鉤(貴金属:金銀パラジウム合金)の減少傾向は2014年以降も進行し,両翼鉤(卑金属:Cr系合金)はやや増加した.貴金属のバーは2014年以降は減少傾向にあり,Cr系合金のバーはやや増加した.新製義歯に対する修理の割合は増加を続けたが,2013年以降は床裏装の割合は減少傾向であった.
考察:以上の変化には,社会(経済,人口構成,歯科疾患の変化,金属価格,感染症の蔓延など),技術(インプラントなど),制度(公的医療保険制度,自己負担金など)の変化との関係が考えられた.
結論:義歯新製は減少傾向にあるが,義歯修理はほぼ一定であった.クラスプやバーの材質は価格の不安定な金銀パラジウム合金から卑金属(Co-Cr)への移行傾向がさらに進行していた.
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