日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
15 巻, 1 号
令和5年1月
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
巻頭言
依頼論文
◆企画:第131 回学術大会/専門医関連委員会セミナー 「機構認証を目指す日本補綴歯科学会専門医の認定制度,研修機関と研修の概要」
  • 河相 安彦
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     公益社団法人日本補綴歯科学会(以下 本会)では一般社団法人日本歯科専門医機構(以下 機構)の認証を視野に入れた準備を2017年度ごろから着手し,2021年度まで機構との意見交換が重ねられ,2022年4月1日より新制度の運用を開始し,今後新制度運用の適正について機構の審査を受ける状況にある.新制度構築の背景には機構が行う歯科医師の専門性を認定された場合,広告可能となることにあり,その根拠となる医療法の改正告示(医政発0929第7号)が令和3年10月1日に行われている.

     機構の認定を受ける歯科専門医は,専門領域において適切な研修・教育を受け,十分な知識と経験を備え,患者から信頼される歯科医療を提供できる歯科医師であることはもとより,プロフェッショナルオートノミーに基づき自ら倫理感を備え,研鑽を積み重ね生涯研修を通じて,質の保証をすることが求められる.補綴歯科の専門性の提供先は国民であるという理念に沿った本会の制度の見直しが必要であった.その結果,補綴歯科専門医は補綴の基本的な症例と難症例に対応できる能力が担保されているかの評価を強化と,補綴学の専門性に限らず,歯科医師が一般的に身につけるべき知識・技能・態度に関する研修を受講する要件を加えた制度へ改定を行った.

  • ─研修機関の認定基準─
    木本 克彦
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     公益社団法人日本補綴歯科学会は,広告開示可能な補綴歯科専門医(仮称)に関して,一般社団法人日本歯科専門医機構(以下 機構)との複数回に及ぶ意見交換会を経て,2022年4月から認定研修施設の代表指導医を中心に新制度の運用を開始し,正式な認証に向けて準備を進めている.新制度における「専門医申請・更新の要件および認定基準」については,旧制度に比べて,取得しなければならない単位数が増え,新たに専門医共通研修と新制度専門医認定試験が要件として加わった.新制度専門医認定試験については,すでにWeb形式にて記述試験が行われ,運用が開始されている.一方,「認定研修機関の要件および認定基準」についても認定基準が新たに改定された.特に各認定研修機関に求められる研修に必要な補綴症例は,基本的な症例と難症例に分類され,各症例の治療記録の提出が義務付けられた.また,必要な症例数は,補綴症例の難易度と各認定研修機関に所属する「専門研修医数」および「指導医・専門医数」によって決められ,最終的には,機構の運用審査と実態調査によって総合的に評価される.本稿では,新たに改定された専門医・研修機関の認定基準の要点について解説する.

  • ─補綴歯科専門医教育カリキュラム─
    鮎川 保則
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     公益社団法人日本補綴歯科学会では,教育問題検討委員会を中心として一般社団法人日本歯科専門医機構が求める,補綴歯科専門医を育成するためにふさわしい教育カリキュラムの構築を進めてきたが,このたびカリキュラムが概ね完成したことから,第131回学術大会でそのあらましを報告した.セミナーでは時間の制約もあり,お伝えできなかった項目もあることから,本稿は改めて会員の先生方に教育カリキュラムの内容を知っていただく目的で執筆した.

     補綴歯科専門医制度のカリキュラム設計は,ファンダメンタルとして補綴歯科専門医の基本知識・技能を学修する基本研修があり,そのうえに大きく分けて症例を基準とした「ケースシリーズベース評価」と,補綴歯科専門医が満たすべき能力の視点からの「コンピテンスベース評価」の二本立ての評価を行う.これらの評価や学習到達度については,いわば実習帳ともいうべき「補綴歯科専門医研修評価記録」に整理する.本稿では主に補綴歯科専門医研修評価記録の記載方法について概説しつつ,機構認定の補綴歯科専門医資格取得に必要な単位,試験について解説する.

     現在このカリキュラムは各研修機関で試用を行っており,内容の矛盾点や運用上の問題点の改善のために随時改訂を行っていく予定であるが,基本骨格については概ね固まっていると考えていただいて差し支えない.若手補綴歯科医の指導や,教育を受ける若手歯科医師の参考にしていただきたい.

◆企画:第6 回補綴歯科臨床研鑽会プロソ’21 /シンポジウム4 「咬合崩壊への対応と予知性の高い咬合再構成と良好な予後獲得へ向けた計画と実践」
  • 谷田部 優
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     臼歯部咬合崩壊を放置しておくと,咬合高径の低下,咬合平面の乱れやいわゆる「すれちがい咬合」となるリスクが高くなり,補綴治療の難易度が高くなることは日常臨床でしばしば経験する.一般的にその対応として行われる咬合再構成は,ブリッジやインプラントによる固定性補綴装置による治療が念頭におかれている.しかし,実際の臨床では欠損を含む臼歯部咬合崩壊に対して,可撤性義歯を用いて対応しなければならない場合も少なくない.本稿では,咬合再構成を必要とする症例において,部分床義歯で治療した際の問題点と対応について私見を述べる.

  • ─歯列不正,歯周疾患,多数歯欠損を読み解く─
    上田 秀朗, 上田 愛佳, 加倉 加恵
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     臨床症状の有無に関わらず,咬合に問題を抱えている患者は多い.そのような患者に対して良好な口腔内環境を獲得し永続させるためには,不良な咬合関係を是正し,顎口腔系(顎関節,口腔周囲筋,歯・歯周組織)の調和を図る必要がある.本稿では,患者の病態を「歯列不正」,「歯周病」,「多数歯欠損」の三つに分類した.それぞれが持つ特徴と治療のポイントがどこにあるのかを症例を提示して解説する.「歯列不正」の解消には矯正治療が有効であり,「歯周病」の進行した症例では,効率的な連結固定が有効である.「多数歯欠損」における咬合再構成はインプラントの利用が効果的であり,治療をシンプルにする.咬合再構成は患者個々の病態に応じた治療法を的確に適応して,長期的に安定した咬合状態を維持できるように再構成する必要がある.

◆企画:令和3年度関西支部学術大会/公開症例検討会 「様々な欠損形態に対するアプローチを考える −少数歯欠損(前歯部欠損を例に)」
  • 〜全部被覆型カンチレバーブリッジの再考察〜
    畔堂 佑樹
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     少数歯欠損に対する補綴歯科治療として固定性部分床義歯(fixed partial denture:以下ブリッジ)は長年多く用いられ,とくに支台歯が生活歯のブリッジは長期的に安定した予後が報告されている.一方,支台歯を多く削合する従来型のブリッジは,昨今のMID(minimal intervention dentistry)の考えから,疑問視されつつある.インプラントおよび接着ブリッジがMIDの観点から推奨され,支台歯数の少ないカンチレバーブリッジも状況に応じて選択されることもある.本稿ではカンチレバーブリッジにおいて考慮するべき要点を文献や模型上の考察をもとに整理した.

  • 覺道 昌樹
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     欠損補綴治療に対する治療の選択肢は,歯科医療技術の進歩とともに多種多様な治療法が存在し,最適の治療は個々の患者の背景や口腔内外環境,保険適応の有無などによって異なる.

     2ユニットブリッジは単独歯欠損の治療の選択枝として,基礎研究や症例報告にて優れた臨床経過が報告されている.接着技術の飛躍的な向上が認められて以降,健康保険の範疇で適応となる従来型の接着ブリッジ(2支台装置型)で確立された接着操作は2ユニットブリッジにおいても重要である.さらに,CAD/CAM技術の発展により高密度焼結型ジルコニアが主流となった現在においては,ジルコニアを用いた2ユニットブリッジの適応の拡大と良好な予後は期待できると考える.

  • 谷岡 款相
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     インプラント治療の治療計画において,残存歯の抜歯の可否,ならびに隣在歯の修復の可否,治療期間や審美性を考慮し,十分な咬合力に耐えうるインプラントの埋入本数,埋入位置・方向等を計画したうえで,患者の要望を踏まえ,エビデンスレベルの高い治療の選択肢を提案することが重要である.特に前歯部のインプラント治療では,審美性等の患者の要望,侵襲の度合い,治療期間,治療の予後等も踏まえ治療計画を提示する必要がある.インプラント治療は,他の天然歯に対する補綴治療に勝ることはなく,あくまで代替治療であることを理解して治療を進めるべきであると考える.

◆二次投稿企画:Journal of Prosthodontic Research /64巻2号 「Accuracy and practicality of intraoral scanner in dentistry: A literature review」
  • 鬼原 英道, 高藤 恭子, 近藤 尚知
    原稿種別: 依頼論文
    2023 年 15 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     このレビューの目的は,現在の口腔内スキャナーの精度と実用性およびその検証方法を評価することである.

     照度と色温度が口腔内スキャナーの真度と精度に影響を与えることが報告されていた.口腔内スキャナーの再現性は,部分的な範囲では固定性補綴装置を製作できる可能性を示していたが,クロスアーチの固定式補綴装置に関しては,現在のところ困難であると考えられた.しかし,マウスガードや義歯の製作に関しては,口腔内スキャナーは,デスクトップスキャナーと同等であると考えられた.

     口腔内スキャナーは進化するデバイスであるため,今後さらなる精度向上が期待される.今後も口腔内スキャナーの精度の検証を行っていく必要があるであろう.

特別企画
認知機能と口腔機能の相関に関する探索的研究(ECCO)プロジェクト
  • 笛木 賢治, 佐々木 啓一, 眞鍋 雄太, 木本 克彦, 窪木 拓男, 上田 貴之, 安部 友佳, 稲用 友佳, 釘宮 嘉浩, 白石 成, ...
    原稿種別: 特別企画
    2023 年 15 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

     超高齢社会の本邦において認知症への対策は喫緊の課題であり,国の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)において歯科医師にも積極的な関与が求められている.歯学研究において,認知機能と口腔機能の関連は,関心が高いテーマで,これまでに基礎・臨床研究が多数報告されている.その一方,医科専門分野では口腔因子が認知機能の低下または認知症の発症のリスク因子として共有されるに至っていない.(公社)日本補綴歯科学会は,認知機能と口腔機能との相関について新たな研究を展開するために,(公社)日本老年精神医学会と連携して研究プロジェクトを推進している.本稿では, ECCOプロジェクトを設立した経緯と活動内容を概説する.

調査・資料
  • -過去8年間の調査結果の追加分析-
    佐藤 裕二, 古屋 純一
    原稿種別: 調査・資料
    2023 年 15 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    目的:厚生労働省の社会医療診療行為別調査をもとに,1996年~2013年の16年間の義歯診療の変化の報告後, 8年が経過し,社会情勢の変化による影響を明らかにするため,2014年から2021年までの8年間の調査を行い,以前の結果と併せて分析を行った.

    方法:社会医療診療行為別調査(厚生労働省)の24年間の義歯関連診療細分類ごとの件数から,1)義歯新製, 2)クラスプ,3)バーと補強線,4)修理・裏装の4項目について検討した.

    結果:義歯新製件数は2014年以降も減少傾向が続いた.クラスプの総数は,義歯新製数の減少に対応して減少していたが,両翼鉤(貴金属:金銀パラジウム合金)の減少傾向は2014年以降も進行し,両翼鉤(卑金属:Cr系合金)はやや増加した.貴金属のバーは2014年以降は減少傾向にあり,Cr系合金のバーはやや増加した.新製義歯に対する修理の割合は増加を続けたが,2013年以降は床裏装の割合は減少傾向であった.

    考察:以上の変化には,社会(経済,人口構成,歯科疾患の変化,金属価格,感染症の蔓延など),技術(インプラントなど),制度(公的医療保険制度,自己負担金など)の変化との関係が考えられた.

    結論:義歯新製は減少傾向にあるが,義歯修理はほぼ一定であった.クラスプやバーの材質は価格の不安定な金銀パラジウム合金から卑金属(Co-Cr)への移行傾向がさらに進行していた.

専門医症例報告
  • 高阪 貴之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は67歳男性で,左側上顎洞癌により同部切除および術後放射線治療を受けたが,晩期障害として開口障害が残存し,咀嚼困難を訴えていた.開口時における十分な上下顎歯間距離を確保することを目的とし,残存歯の抜髄および歯冠補綴処置により咬合平面および咬合高径を修正したうえで,上顎顎義歯および下顎部分床義歯を製作した.

    考察:本症例では,計画的な補綴前処置によって開口時における上下顎歯間距離を確保できたことで,十分な咀嚼が可能になり,良好な結果が得られたと考えられる.

    結論:開口障害に対して適切な補綴前処置を行ったうえで義歯を製作したことにより咀嚼機能が回復し,患者の高い満足度が得られた.

  • 野川 博史
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は20歳女性.上顎臼歯欠損による咀嚼不良と側切歯矮小歯による審美不良を主訴に来院した.低侵襲な治療による歯質削除量の減少と咬頭嵌合位の温存を図るため,ポーセレンラミネートベニアとジルコニアをフレームワークとした接着ブリッジによる治療を行った.

    考察:診断用ワックスパターンを参考に,適切な補綴設計,支台歯形成,接着操作そして材料選択を行ったことにより,長期的に安定した補綴処置が可能となったと推察される.

    結論:ポーセレンラミネートベニアと接着ブリッジを適用することにより,長期的に安定した審美性の改善と咀嚼機能の回復が可能であることが示唆された.

  • 川西 範繁
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は67歳男性.頻回の義歯破損による咀嚼困難を主訴に来院した.残存歯の状態から複合すれ違い咬合を呈していた.過度の加圧因子に耐えうるために上下顎義歯に金属床を応用することにより,義歯の安定,主訴であった咀嚼機能改善を行った.

    考察:すれ違い咬合は,咬合支持の喪失により受圧条件としての顎堤状態や加圧因子である残存歯からの影響が大きいため,口腔内の状態変化に特に注意する必要があり,咬合調整やリラインなどの積極的な介入が重要であると考える.

    結論:複合すれ違い咬合に対して剛性および強度を得るため金属床義歯を応用し,口腔内環境の変化を最小限にしたことにより長期安定が得られたと考える.

  • 楠本 友里子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は70歳の男性.下顎左側臼歯部の動揺・疼痛による咀嚼困難を主訴に来院した.重度歯周炎による咀嚼障害と診断し,長期予後が期待できない残存歯を抜歯した.その後,可撤性義歯により可及的に咬合高径を保持しながら,上下顎に各4本のインプラント体を埋入し固定性インプラント補綴装置を装着した.

    考察:プロビジョナルレストレーションで清掃指導と基底面形態の調整を行い,その形態を最終補綴装置に移行したことで,機能性だけでなく清掃性も配慮され,良好な予後が得られた.

    結論:重度歯周炎による咀嚼障害に対し可撤性義歯を活用しながらインプラント補綴治療を行った結果,口腔関連QoL・咀嚼機能が向上した.

  • 濵 洋平
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:66歳男性,見た目が悪いこと,食事がしづらいことを主訴に来院した.残存歯の傾斜・挺出により,著しい咬合平面不正を呈していた.咬合高径の挙上,抜歯,便宜抜髄の後に下顎前歯に根面板,上顎クラウン・ブリッジ,上顎部分床義歯,下顎全部床義歯を製作し,咬合平面の是正を行った.

    考察:咬合平面是正のために,咬合高径挙上を伴う顎間関係の修正が必要であった.まず治療用義歯を用いて許容される咬合高径を判断してから最終補綴を行うことで,良好な結果を得ることができた.

    結論:咬合平面是正をしたことで,咀嚼機能の回復および患者の高い満足を得ることができた.術後3年以上,問題なく経過している.

  • 髙草木 謙介
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 105-108
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:75歳男性.3 |前装鋳造冠脱離に伴う義歯不適合による咀嚼困難を主訴に来院した.前装鋳造冠および下顎部分床義歯を製作後,来院が途絶えるも5 | 全部鋳造冠脱離を機に治療が再開した.保存困難な歯の抜去後,上顎は磁性アタッチメントとオーバーデンチャー,下顎は全部鋳造冠と部分床義歯を製作した.

    考察:磁性アタッチメントによる歯冠歯根比の改善,把持効果を最大限に得られる設計とした下顎部分床義歯により上下ともに義歯の安定が得られ,咀嚼能力の改善と患者の高い満足度が得られた.

    結論:多数歯欠損を有する患者に対し,磁性アタッチメントを用いたオーバーデンチャーで治療を行い良好な結果を得ることができた.

  • 水橋 史
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 109-112
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は上下顎無歯顎の78歳の女性で,義歯を装着すると疲れるとの主訴で来院した.使用中の義歯は舌房が狭く,下顎の顎堤は上顎に対して唇頰側に位置していた.このため,咬合器上で顎堤の対向関係を確認し,右側は交叉咬合,左側は正常被蓋の両側性平衡咬合を付与することとした.人工歯の排列は,作業用模型の歯槽頂の位置を転写するシートを作成し,これを参考に行った.

    考察:狭小な舌房に起因する高位咬合感は,交叉咬合排列を適応することで解消され,良好な経過が得られたと考える.

    結論:顎堤の左右的対向関係が不良な無歯顎患者に対して交叉咬合排列を適用して機能回復を図ったことで,高い患者満足度が得られた.

  • 米澤 悠
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は,初診時56歳の男性.残存歯の動揺による咀嚼困難を主訴に来院した.検査の結果,広汎型重度慢性歯周炎と咬合平面および咬合様式の不調和を起因とした咀嚼障害と診断した.全残存歯の保存が困難と判断し,光学印象採得を用いて即時義歯を製作した.治療期間中に審美障害,発音障害,咀嚼障害を生じることなく,最終補綴装置である上下顎全部床義歯を製作した.

    考察:光学印象から即時義歯を製作することで,口腔機能を維持し円滑に最終補綴装置に移行できた.

    結論:印象採得時に歯が抜ける可能性がある症例においては,光学印象採得を行うことで,患者の不利益を最小限に抑えた治療を行うことが可能となった.

  • 久保 大二郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 117-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:87歳の男性で,咀嚼困難と歯の審美不良を主訴に来院した. 口腔内検査では,逆流性食道炎が原因と考えられる酸蝕症による咬合高径低下を認めた.オクルーザルアプライアンスと2回の暫間補綴装置装着を行い,暫間補綴装置の情報から,顎運動に調和した歯冠補綴装置を製作し咬合再構成を行った.

    考察:暫間補綴装置の形態と咬合関係を最終補綴装置に反映したため,顎運動に調和した歯冠補綴装置を製作することができたと考える.

    結論:咀嚼障害と審美障害を有する患者に対し咬合再構成を行った.最終補綴装置形態決定にオクルーザルアプライアンスと暫間補綴装置を用いることは有効であった.

  • 濱田 匠
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は82歳の男性で,主訴は下顎全部床義歯の動揺による咀嚼困難であった.開口時と咀嚼時に義歯の動揺が認められ,閉口時に早期接触が生じた.全部床義歯の外形の不良と早期接触による咀嚼障害と診断し,治療用義歯を使用してダイナミック印象を行い,上下顎全部床義歯を製作した.

    考察:本症例では,治療用義歯を製作し,大幅な咬合の調整や日常生活における機能時の粘膜動態を採得し,適切な床縁の位置や咬合関係を決定できたため,良好な経過が得られたと考えられる.

    結論:旧義歯の問題点を修正した治療用義歯を用いて全部床義歯を製作することで,機能時に義歯が安定し,最終的に患者の満足ならびに咀嚼機能の回復を達成した.

  • 畠山 航
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 125-128
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は21歳女性.前歯部審美障害を主訴に来院した.出生時から片側唇顎口蓋裂を認め,これまで口唇形成術,顎裂骨移植術,矯正歯科治療の既往がある.上顎前歯部に対し,ポーセレンラミネートベニアおよびオールセラミッククラウンを用いた補綴治療を行った.

    考察:治療開始に先立ち,診断用ワックスアップを行い,目指す補綴治療のゴールを患者および担当歯科技工士と共有することにより患者満足度の高い補綴治療を行うことができたと考える.

    結論:最終補綴装置装着後3年の口腔内は,経過良好である.ポーセレンラミネートベニアおよびオールセラミッククラウンを用いることにより低侵襲で審美的に良好な結果を得ることができた.

  • 西村 朋子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は初診時79歳の男性.上顎前歯部の動揺と上下顎義歯不適合による咀嚼困難を主訴に来院した.残存歯による臼歯部咬合支持の喪失,咬合高径の低下,咬合平面の不整を認めた.まず保存困難な歯を抜歯し,旧義歯を修正して咬合を是正しながら,上顎は金属床にするなどの義歯の最終設計を考案して,上下顎部分床義歯を装着した.

    考察:旧義歯の修正により,現存する問題を具体化し,適切な義歯設計を模索できた.その結果,本ケースのようなすれ違い咬合に適した機能を有する設計を新義歯に付与できたと考えられる.

    結論:すれ違い咬合に対し,適切な補綴前処置や周到な義歯設計は,義歯による咀嚼機能の改善に大きく寄与する.

  • 加我 公行
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 133-136
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:患者は64歳女性.前歯でうまくかめないことと,義歯を外した時に上顎前歯がないのが気になることを主訴に来院.上顎義歯不適合による咀嚼障害および審美障害と診断し,上顎前歯を含む欠損部に4本のインプラントを埋入後,インプラント支持による固定性補綴と上顎残存歯への歯冠補綴によって咀嚼機能と審美性の回復を図った.

    考察:インプラント支持による固定性補綴装置にすることで,咀嚼機能と審美性の向上に寄与することができた.

    結論:咀嚼障害および審美障害に対して,インプラントを用いた固定性補綴装置を選択することで,口腔機能の改善と審美性を含め高い患者満足度を得ることができ,良好な結果が得られた.

  • 末廣 史雄
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 137-140
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:63歳の女性.臼歯部欠損による咀嚼困難を主訴に来院した.大臼歯部の咬合支持は失われており,両側小臼歯部の咬合支持も1歯ずつであった.右側上顎洞底挙上術後に上顎両側,下顎左側にインプラントによる補綴治療を行った.

    考察:本症例では,臼歯部での適切な咬合力支持が得られなかったことによる過度の荷重負担から歯根破折に至ったと考えられる.インプラント治療により臼歯部咬合を確立したことで,治療終了から3年後も経過良好であり,今後も残存歯の喪失を防ぐことができると考えられる.

    結論:上顎洞底挙上術を併用したインプラントによる補綴治療を行い,臼歯部の咬合支持を回復したことで咀嚼障害の改善が得られた.

  • 山口 雄一郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 15 巻 1 号 p. 141-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/01/22
    ジャーナル フリー

    症例の概要:65歳女性.上顎多数歯欠損により臼歯部に咬合支持がないことに起因する度重なる暫間補綴装置破折とそれに伴う咀嚼困難を主訴に来院した.上顎両側犬歯および臼歯部欠損に対するインプラント固定性補綴治療と既存のインプラントと残存歯に対する固定性補綴治療を行った.

    考察:最終補綴装置装着後3年2か月経過し,補綴装置に機能的・審美的な問題はない.失った臼歯部咬合支持を唯一回復させる手段であるインプラント固定性補綴治療によって良好な治療効果が得られたと考えられる.

    結論:臼歯部の咬合支持を失った症例に対し,インプラント固定性補綴治療で咬合支持を回復させることで咀嚼機能が改善し,良好な経過が得られた.

feedback
Top