2023 年 15 巻 4 号 p. 555-558
症例の概要:患者は58歳女性で,食片圧入を主訴に来院した.臼歯部を中心に,補綴装置の摩耗や残存歯質の破折を多く認めた.咬合関係は,前歯に咬合接触がない開咬状態であった.補綴治療により犬歯に中心咬合位での咬合接触を付与し,側方運動時にグループファンクションによる大臼歯離開咬合を与えた.補綴装置装着4年5か月後も患者は機能的,審美的に満足している.
考察:側方運動時に大臼歯離開咬合を与えたことで,補綴装置の過度な摩耗や破折を防ぐことができ,患者の高い満足に繋がった.
結論:開咬の患者に中心咬合位における犬歯での咬合を付与し,側方運動時の咬合様式に配慮した全顎的な補綴治療を行ったことで,良好な経過を得た.