日本補綴歯科学会誌
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調査・資料
気管挿管時に上顎前歯部部分欠損歯列へ適応する保護用スプリントのデザイン
渡邊 竜登美鈴木 哲也高橋 英和
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2024 年 16 巻 3 号 p. 370-378

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抄録

目的:上顎前歯部部分欠損症例に対して,全身麻酔手術での気管挿管時に用いる保護用スプリントの適切なデザインを明らかにすることを目的とした.

方法:箔ひずみゲージを各人工歯に接着した上顎顎模型を用い,3パターンの前歯部部分欠損歯列を設定した.厚さの異なる3種のスプリント(2, 3, 4 mm)を装着し,咽頭鏡ブレードで 21| 間に荷重した.欠損なしをコントロールとして,スプリントの違いによる各人工歯への荷重相当量分布と 1|  への荷重相当量を比較した.また,欠損部への常温重合レジン添加およびコバルトクロムワイヤーの埋め込みによる補強効果と,被覆範囲を両側第一小臼歯間のみに短縮した場合の影響についても検討した.

結果: 1| への荷重相当量はスプリントの厚さに関わらず,すべての欠損パターンで欠損なしよりも有意に大きかった.1mm厚くするごとに荷重相当量は有意に減少したが,欠損パターンごとに荷重相当量分布は異なっていた.レジン添加では荷重相当量が有意に増加し,ワイヤー埋入は有意な効果は得られなかった.また,被覆範囲を短縮したスプリントでは全歯列型に比べ荷重相当量は有意に増加した.

考察:欠損なしにおける厚さ2mmの 1|  への荷重相当量を評価基準とすると,同程度の荷重相当量に抑えるには,前歯部欠損症例では3mmでは荷重相当量が大きく,4mmの厚さが必要であった.

結論:前歯部部分欠損症例では保護用スプリントは厚さ4mmで,全歯列を覆うスプリントが推奨される.

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