超高齢社会において,嚥下障害,誤嚥性肺炎,低栄養は相互に関連しながら進行する重要な健康課題である.高齢者では嚥下機能低下の有病率が高く,その進行に伴い誤嚥性肺炎の発症リスクが増大する.また低栄養は免疫低下や筋力低下を招き,嚥下機能の更なる悪化やサルコペニアを介して悪循環を形成する.特に咀嚼機能の低下は,タンパク質摂取不足や食事量減少を引き起こし,低栄養の進行に寄与する.したがって歯科領域においては,単なる咬合回復にとどまらず,「十分に食べられる能力」の評価と早期介入が重要である.食事内容や体重変化への着目,義歯の適切な使用指導ならびに医科・栄養分野との連携により,低栄養と嚥下障害の悪循環を断ち切ることが求められる.これらの包括的介入により,高齢者の健康寿命の延伸,QOL向上と「最期まで口から食べる」社会の実現が期待される.