現在の歯冠修復物の作製は,鋳造用金合の開発とロストワックス精密鋳造法の応用により確立した.歯冠色の必要な症例に対してはポーセレンやコンポジットレジンの前装が日常的に利用される.これらは手作業中心の技工作業である.一方,コンピュータを利用した成形加工法であるキャドキャムを歯冠修復物作製に応用する試みは,1980年代から世界中の歯科大学や歯科企業で行われてきた.2000年代に入り,高密度焼結体セラミックスの利用とりわけジルコニアの利用が,ネットワークを利用したセンター方式のキャドキャム成形加工法により実用化され,普及が期待されている.歯冠修復物へのキャドキャムの利用は,新素材の適用,技工作業の省力化,経済性,品質管理の観点から長所が大きい.今後の普及に向けて,臨床家が材料とキャドキャム成形法の利点と限界をよく認識し,支台歯形成から合着までの臨床術式を遵守することと,これまで以上に歯科技工士との協働が必要になる.