日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
原著論文
ガラスファイバー補強レジンを用いた歯冠修復物の破損に関する8年間の予後調査
墨 尚阿部 俊之柴田 紀幸吉田 真琴犬飼 敏将伊藤 裕
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 3 巻 1 号 p. 12-17

詳細
抄録

目的:筆者らは,ガラスファイバー補強型高分子材料に注目し,微細構造の観察および組成の解析を行った.その結果,臨床使用に耐えうる材料であると判断し,1997年より,臨床応用を開始した.しかしながら,経過観察中に,装着した補綴装置が破損をきたす例がしばしば観察されたため,破損についてのコホート研究に着手することにした.
方法:1999年6月25日から2000 年9月7日までの1年3カ月間に愛知学院大学歯学部附属病院で装着されたタルギス-ベクトリス修復物を調査対象とし,その破損状態を調査した.
結果:全73個中の35個(47.9%)で破損がみられた.修復物の種類別では,インレーは14個中6個(42.9%),クラウンは43個中14個(32.6%),ブリッジは16個中15個(93.8%)の比率で破損がみられた.Kaplan-Meier Product-Limit推定法による8年の生存率はインレー:57.1%,クラウン:69.0%,ブリッジ:6.7%と推定された.
結論:臨床医は,新しいコンセプトや技術により開発された材料を短絡的に使用するのではなく,長期間の予後観察を経て安全性・耐久性の確立された治療を行うべきである.

著者関連情報
© 2011 社団法人日本補綴歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top