抄録
補綴領域におけるCAD/CAMは,スキャニングの精度および設計の自由度と操作性,そして技工作業のなかで応用できる行程が拡大され,またそれらを再現する加工精度も日々向上している状況である.加えて,加工される素材もワックス,レジン,金属,そしてセラミックスなどさまざまなものに応用されるようになり,その素材自体も進歩している.
単相の結晶構造を有するイットリウム安定化二酸化ジルコニウムは,優れた曲げ強度(900~1300 MPa以上)を示しながら生体安定性も有するため,これまでの素材では予後に大きな期待のできない臨床ケースにも応用が検討されている.しかし,新規材料・技術であるがゆえに,この優れた材質を最大限有効に利用した審美修復術式が確立しているとは言えず,歯周組織との調和のとれた審美性の獲得と,その長期的安定を実現するための手技に関する情報は十分と言い難い.
本稿では,歯科技工士が実際にジルコニア素材を扱うに当たって何に注意すべきか,臨床ステップを示しながら述べてみる.