抄録
症例の概要:患者は68歳男性.咬耗による審美不良を主訴に来院した.著しい咬耗による歯質の実質欠損によって引き起こされる咬合高径の低下ならびに審美障害の回復を図るため,補綴治療による咬合の再構築を行った.
考察:スプリントやプロビジョナルレストレーションを用いて顎位を設定し,長期的に経過観察を行った後に補綴装置を作製したことにより,良好な予後を得られていると考えられる.
結論:咬耗から引き起こされた実質欠損による審美障害が認められる症例において,治療開始前に適切な咬合高径を診断し,安全性の確認を可逆的に行ったうえで,歯冠形態ならびに咬合高径を回復し補綴装置を作製することが重要である.