抄録
症例の概要:患者は77歳,男性.過去に数度,義歯の再製作を繰り返したが咀嚼および発音時における義歯の安定が改善されず,義歯の不安定を主訴に来院した.初診時口腔内は,上下無歯顎であり,上顎と比較して下顎が前方位に位置していた.
考察:顕著な下顎前突症の無歯顎患者に対する補綴処置に際して,頭部 X線規格写真から上顎模型の咬合器装着基準を求めたが,それを基に構築された咬合関係により,最終補綴物の維持・安定性が改善され,良好な経過を得られたと考えられる.
結論:下顎前突を伴う上下無歯顎症例の補綴物製作に関して,頭部 X線規格写真を応用することは有用な診断基準となることが確認された.