抄録
目的:ノンクラスプデンチャーは特異的弾性を有することから,金属維持装置を必要とせず,広く臨床応用されつつある.しかしながら,審美性を優先した設計が先行しており,レストを設置しないメタルレスの設計も行われている.本研究は,ノンクラスプデンチャーにおける金属レストの有無が義歯床下粘膜の負担圧分布に及ぼす影響について検討を行った.
方法:下顎片側性中間欠損を想定したシミュレーション模型に三つの圧力センサーを設置した.実験義歯は,金属レスト付きノンクラスプデンチャー,レストも熱可塑性樹脂で製作したノンクラスプデンチャー,レストを設置しないノンクラスプデンチャーの3種とし,コントロールとして,金属レスト付きアクリルレジン床義歯,コバルトクロム製金属構造義歯の2種を製作した.擬似粘膜としてシリコーン印象材を介在させ,49.0 Nの荷重を加えた時の義歯床下粘膜の負担圧分布を測定した.得られたデータ(n=5)は一元配置分散分析後,Tukey の多重比較検定(危険率1%)を行った.
結果:5種実験義歯のなかでは,金属構造義歯の負担圧は有意に小さく,レストも熱可塑性樹脂で製作したノンクラスプデンチャーが最も大きい値を示した.また,ノンクラスプデンチャーであっても金属レストを付与することによって負担圧が軽減された(p<0.01).
結論:ノンクラスプデンチャーにおいて義歯床下粘膜の負担圧軽減には,金属レストの設置が必要であることが示唆された.