抄録
これまで,症例の術後対応に向かい合いながら,上顎と下顎の欠損の違いを感じつつ,それぞれの問題点も臨床的な実感として抱きながら,対応してきた.特に,「上減の歯列」は,進路の道筋や進行のスピードなど,その捉え方は難しい.患者の不便性やその訴えからでは,適切な病態の判断は難しく,それぞれの歯列に内在したリスクや兆候を読み取ることが必要とされながらも,症例によっては後手になってしまった対応例も少なくない.また,咬合欠陥を抱えた上顎歯列の補綴では,残存歯の固定やリジットな可撤性補綴,さらには,インプラントの応用など,いくつもの選択肢がありながら,補綴介入の時期やその見極めなど,いまだ不明確な点もある.