抄録
目的:若年者における顎関節症症状の発症には楽器演奏の関与が指摘されているが,音楽経験の開始と症状発現の因果関係に関して明確に検討した研究は少ない.本研究では,若年音楽経験者の顎関節症症状発現の実態を明らかにすることを目的とし,成人との比較を下に音楽経験と顎関節症症状発現との因果関係を調べた.
方法:被験者は長野県下の中学生とし,独自のアンケート調査票を用いて疫学的調査を行った.また,比較対照として成人にも同様なアンケート調査を実施した.分析項目は,顎関節症症状発現時期と音楽経験開始時期との関連性,顎関節症症状の発現率,顎関節症症状の発現にかかわる因子,および,性格傾向と顎関節症症状発現との関連性とした.
結果:若年者および成人ともに,顎関節症症状の発現率は音楽経験者のほうが未経験者に比べて高い値を示し,発現時期については音楽経験開始時期と同じか,それよりも遅れて認められる傾向にあった.若年の音楽経験者においては,日中のくいしばりが顎関節症症状の発現に関連しており,また,顎関節症症状を示す者は示さない者に比べて神経症的性格傾向が強いことが明らかとなった.
結論:音楽経験開始時期と顎関節症症状発現時期との間に一定の関連性が認められたが,これは若年者に限った傾向ではなく,成人においても同様であった.むしろ,若年の音楽経験者においては,神経症的性格傾向による影響の強いことが示唆された.