抄録
臼歯部での咀嚼状況を基礎的研究に加えて日々の臨床で詳細に観察したところ,咀嚼時の食物の粉砕は第1大臼歯の機能咬頭間に局在する『主機能部位』と名付けたわずか数mm四方の範囲が中心となって営まれていることが明らかとなった.
同部位を進化学的に検討した結果,臼歯の中で第1 大臼歯だけに3,000万年以上も前から変わることなく現在まで維持され続けている食物粉砕のための機能的な部位のあることが明らかとなった.
そのような第1大臼歯に注目し,咬合面の主な機能を「咬頭嵌合位の維持」と「円滑な咀嚼」として解剖学的形態の中に備えるべき機能的な要素を検討した結果,(1)咬合接触,(2)主機能部位,(3)被蓋の3要素に集約することができた.