抄録
症例の概要:患者は初診時74歳女性で,主訴は顎堤部疼痛による咀嚼困難であった.残存歯による咬合支持が喪失し,すれ違い咬合を呈し,また顔貌より咬合高径の低下が疑われた.また欠損部顎堤の吸収が著明であった.歯周および補綴前処置を行い,旧義歯にて咬合挙上および咬合平面の修正を行った後に,部分床義歯にて咬合を回復した.
考察:本症例では,義歯の剛性に配慮したこと,またすれ違い咬合であったが,下顎左側最遠心部に歯が残存し,中間欠損化できたことが,早期の咀嚼困難の改善を達成できた要因と考えられる.
結論:咬合高径の低下ならびにすれ違い咬合に対して,前処置と義歯の設計を適切に行い,良好な咬合機能の回復が図れた.