日本補綴歯科学会誌
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5 巻, 2 号
【特集】第121回学術大会より―臨床イノベーションのための若手研究者の挑戦
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依頼論文
◆特集:日本補綴歯科学会第121回学術大会/イブニングセッション1「臨床イノベーションのための若手研究者の挑戦:有床義歯治療と管理の新たな展開」
  • ―有床義歯治療と管理の新たな展開―
    石上 友彦, 水口 俊介
    2013 年 5 巻 2 号 p. 119-120
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
  • ―Quality Adjusted Life-Yearsを用いた前向き疫学調査―
    菅野 京子
    2013 年 5 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    補綴治療において予後分析の結果が適切な治療計画の立案,診断の精度向上および各種検査法の確立にフィードバックできれば有益だが,有床義歯では使用年数と患者口腔関連QOLの変化および治療に要したコストに関する総合的かつ長期的検討は少なく,義歯の長期経過および患者評価に医療経済を統合した診断・治療計画立案の根拠が乏しい.そこで,義歯の長期予後とその間の口腔関連QOLの変化を追跡し,義歯製作から寿命までの費用の算出により医療経済評価を行い,診断および治療計画立案へのフィードバックを行い,良質で効率的な医療の供給につなげたい.さらに,費用対効果の向上と医療費削減に寄与し社会および国民に貢献したいと考える.
  • 金澤 学
    2013 年 5 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    現在の全部床義歯製作法には,臨床・技工操作ともに非常に煩雑で熟練した手技を要する.この問題点を解決するために,われわれはCAD/CAM技術を応用した全部床義歯製作法を考案した.この手法では,改良した旧義歯あるいはパイロットデンチャーをCTによりスキャンし,粘膜面と顎間関係を三次元データとしてPCに取り込む.CADソフトウェア上にて,新しい義歯をデザインした後,顔貌シミュレーションにより新義歯装着時の顔貌の確認を行う.必要があれば,Rapid Prototypingを用いて試適用義歯を作製し,義歯試適を行う.これにより,問題がなければ,マシニングセンタによりアクリルブロックを義歯床形態に切削加工し,人工歯を接着し最終義歯を完成する.
  • 澤田 智史
    2013 年 5 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    高齢者人口の増加に伴い,欠損補綴による義歯の需要増加が予想される.義歯を持続的に使用するには清掃管理は重要である.そこで,義歯清掃法に適した義歯床用材料の開発として光触媒技術を応用したセルフクリーニングデンチャーを考案し,本論文では,これまでの基礎的な研究成果と今後の展望について報告する.複合型二酸化チタン配合アクリルレジン(セルフクリーニングデンチャー)は,就寝時に取り外した義歯に紫外線照射するだけで,光触媒効果により汚れを分解し,カンジダのレジン表面への付着を阻害することが可能である.また,懸念される機械的性質も従来型と比較しても強度低下を抑制でき,臨床への応用が期待される結果であった.
◆特集:日本補綴歯科学会第121回学術大会/イブニングセッション2「臨床イノベーションのための若手研究者の挑戦:補綴治療のための検査法の新たな展開」
  • 皆木 省吾, 藤澤 政紀
    2013 年 5 巻 2 号 p. 135-136
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
  • 飯田 崇
    2013 年 5 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    クレンチングは口腔顔面痛,咀嚼筋痛,顎関節症を引き起こす因子の一つであると示唆されている.クレンチングが生じる理由と発現機序に関しては神経生理学的な中枢の因子と咬合接触などの末梢の因子が関連していると考えられているが,ヒトが無意識下において,この動作を行う理由とメカニズムに関してはいまだに明らかにされていない.クレンチングに関する脳活動の検討は現在までに複数されており,エビデンスが少しずつ集積されている.そこで,今回はクレンチングに関するヒトの脳活動について,これまでに得られた知見を総括して報告する.
  • 田邉 憲昌
    2013 年 5 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    これまで日中のクレンチング習癖に関する調査研究は,本人の自覚による調査やスプリントなどを使用して行われてきた.しかし実際の習癖の保有率などは不明な点が多く,十分な疫学的研究が行われていないと思われる.その要因として,夜間のブラキシズムに関しては睡眠時ポリグラフを用いることで正確な測定が可能であるのに対して,日中のクレンチングは装置が大がかりであるために大規模かつ正確な調査が行えなかったことが挙げられる.
    われわれは,携帯型筋電計を開発し日常生活環境下でのクレンチングに関する検査を行ってきた.本装置を用いることで,明らかでなかった日中のクレンチングの分析に加え,夜間ブラキシズムとの比較が可能となってきた.
  • 吉川 峰加
    2013 年 5 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    歯科医療の最終目的の一つは摂食・嚥下機能の維持・回復であり,補綴治療はその手段となる.高齢者において,生命維持の観点から考えても,嚥下機能の口腔準備期・口腔期で大きな役割を担う舌を中心とする口腔機能が協調運動し,安全に経口摂取することはきわめて重要であり,歯科医師は歯科疾患の予防・治療に加えて,高齢者の低下しつつある口腔機能の維持・回復に対してもアプローチする必要がある.
    われわれは1999年より簡易で広く応用可能な舌圧測定装置の開発を推進し(Hayashi et al.,2002),舌圧と食形態との関連性(津賀ら,2004),舌圧低下と嚥下障害との関連性(Yoshida, et al., 2006),20歳代以降の性別・世代ごとの舌圧標準値(Utanohara, et al., 2008),米国における舌圧測定装置と本装置との互換性(Yoshikawa et al., 2011),本装置による口腔周囲筋の圧力測定(Tsuga et al., 2011)などを報告してきた.本装置は歯科医師のみならず,歯科衛生士,言語聴覚士,看護師,介護福祉士など,高齢者ケアに関わる多くの職種で利用可能である.
    今回は本装置を用いた最大舌圧の測定法はもとより,口唇や頬の圧力測定法や摂食・嚥下障害に対するリハビリテーションにおける有用性について紹介する.在宅治療のニーズも高まるなか,口腔機能を扱う唯一の領域である歯科が補綴治療による咀嚼・咬合の維持・回復に加えて,口腔機能の評価やリハビリテーションを行い,口から全身機能をサポートすることで,わが国の超高齢社会に大きく貢献できることをアピールしたい.
  • 安陪 晋, 河野 文昭, 河相 安彦, 池田 和博, 北川 昇, 西 恭宏, 野村 修一, 古谷野 潔
    2013 年 5 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    日本の歯科医学教育において,世界標準の臨床教育が求められおり,各大学ではさまざまな臨床技能教育の改善に取り組んでいる.
    補綴臨床基礎実習は,共用試験の開始により,技工中心の実習から診察技能を含めた実習に変化しつつある.しかしながら,各大学が独自に試行錯誤的に改善を行っているため,他大学の実習状況を知る機会が少なく,共通の問題意識を持ちながら,解決策を見いだせずにいることも多い.
    今回,29大学の部分床義歯学臨床基礎実習の担当教員を対象として,臨床基礎実習の現状と問題点について意見交換を行い,改善策を探るワークショップを企画し,実施したのでその概要を報告する.
原著論文
  • ―通法と咬合印象法の比較―
    林 亜紀子, 佐藤 正樹, 久保 大樹, 田中 睦都, 向井 憲夫, 田中 誠也, 田中 順子, C田中 昌博
    2013 年 5 巻 2 号 p. 156-164
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    目的:咬合接触再現性の高い歯冠修復物を製作できる歯列模型製作法の探求を目的とした.
    方法:被検者は個性正常咬合を有する健常有歯顎者20名とした.通法1として上下顎とも既製トレーとアルジネート印象材,通法2として上顎を個人トレーと付加型シリコーンゴム印象材,下顎を既製トレーとアルジネート印象材,および通法3として上顎を既製トレーとアルジネート印象材,下顎を個人トレーと付加型シリコーンゴム印象材の組み合わせで印象採得を行った.得られた印象体から歯列模型を製作し,模型法にて咬合器に装着した.咬合印象法ではプラスチックトレーと付加型シリコーンゴム印象材にて印象採得を行い,咬合器上に再現した.口腔内ならびに模型上の咬合記録を咬合接触検査材にて採得し,add画像を抽出した.上顎歯列模型の咬合面,咬合記録およびadd画像を十分視察し,中尾の咬合小面の分類に照合して,咬合接触部位を同定した.口腔内と模型上の咬合接触部位の比較から再現部位数と非再現部位数を求めた.印象法間において対応のある一元配置分散分析とTukeyの多重比較検定を行った.
    結果:再現部位数,非再現部位数ともに4群間で有意差が認められた.咬合印象法は,再現部位数では通法と比較し多い値を示し,非再現部位数では少ない値を示した.
    結論:咬合接触再現性の高い歯列模型の製作には咬合印象法が有用であることが明らかとなった.
  • 原田 光佑, 新谷 明喜
    2013 年 5 巻 2 号 p. 165-173
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    目的:イットリア系ジルコニア(Y-TZP)の破壊靭性値をSingle Edge V-Notch Beam法(SEVNB法)とIndentation Fracture法(IF法)を用いて測定し,その結果を検討し適切な破壊靭性値測定法を明らかにすることを目的とした.
    方法:SEVNB法は,International Organization for Standardization(ISO)6872に準じてVノッチを付与した試験片を用いて,クロスヘッドスピード0.5,1.0 mm/minの2条件で測定し,ISO 6872の計算式で破壊靭性値を算出した.IF法は鏡面研磨した試験片に圧子圧入荷重30 kgf,押込時間15秒でビッカース圧子を圧入して発生させた圧痕とクラックを測定し,日本工業規格(JIS)R1607の計算式で算出した.得られた破壊靭性値は多重比較を行った.SEVNB法の破断面,IF法の圧痕とクラックを走査電子顕微鏡(SEM)で観察し破壊の様相を検討した.SEVNB法の破断面の相変態についてX線回折(XRD)を行った.
    結果:SEVNB法とIF法では有意差を認め,SEVNB法は高い値を示し,標準偏差も大きかった.また,SEVNB法において,クロスヘッドスピード0.5 mm/minと1.0 mm/minとでは,1.0 mm/minのほうが有意に高い値を示した.SEM観察により,SEVNB法では安定破壊と不安定破壊を認め,IF法では圧痕とクラックが明瞭に観察された.SEVNB法の破断面には,曲げ応力による相変態がXRDで認められた.
    結論:Y-TZPの破壊靭性値測定にはSEVNB法よりもIF法のほうが適した試験法であると示唆された.しかし相変態という特異的性質を有するY-TZPの破壊靭性値測定法には,SEVNB法,IF法ともに新たな実験条件を検討する必要があると考えられた.
  • 佐藤 薪, 大島 朋子, 前田 伸子, 大久保 力廣
    2013 年 5 巻 2 号 p. 174-183
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    目的:現在の義歯の清掃方法を正しく評価し,最適な方法の選択基準を示すために機械的,化学的洗浄法の評価を行った.
    方法:(1)義歯床用レジン片上にCandida albicansのバイオフィルムを形成させ,義歯洗浄剤使用群,非使用群とで,1日1回浸漬と洗浄を繰り返し,5日間の洗浄剤連日使用試験を行い洗浄剤の持続効果を確認した.残存菌量はREDOX Indicatorで測定した.(2)既製レジン片を5種類の義歯洗浄剤に浸漬したものと,歯磨剤,義歯用歯磨剤と義歯ブラシを用いたものについて表面粗さとバイオフィルム除去効果を測定した.
    結果:(1)前日までに毎日洗浄剤を使用していてもレジン片を蒸留水で洗浄した群は5日間すべてにおいて多量の残存菌が検出され,洗浄剤使用群と対照群の間に有意差が認められた.(2)ブラシ使用後は表面粗さが増し,歯磨剤を併用すると著しく上昇しており,研磨剤の混入が大きく影響していた.バイオフィルム除去効果はブラシのみでは認められず,高研磨性の歯磨剤の併用が低研磨性より有意に高かったが,義歯洗浄剤の併用が最も優れていた.
    結論:デンチャープラークの除去には歯磨剤を使用せずブラシで清掃した後,そのまま義歯洗浄剤に毎日一晩浸漬すべきである.
専門医症例報告
  • 佐藤 洋平
    2013 年 5 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:53歳,女性.上顎左側臼歯部欠損による咀嚼障害に対する補綴治療のため来科した.機能的咬合印象を行い,セクラロックアタッチメントとミリングテクニックを併用した純チタン製の金属二重構造義歯を装着した.
    考察:アタッチメントによる審美性の回復と剛性を高めた義歯の製作を行ったことにより,患者は製作した義歯の審美性と咬合状態に非常に満足した.機能的回復だけでなく,QOLの向上にも貢献することができた.
    結論:機能的咬合印象による顎運動と調和した咬合面形態とリジッドサポートのアタッチメント義歯を製作することは審美的,機能的に良好な結果を得ることが出来る治療法の一つである.
  • 仲西 康裕
    2013 年 5 巻 2 号 p. 188-191
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:34歳女性.上顎左側臼歯部ブリッジの違和感による咀嚼障害を主訴に来院した.補綴前処置の後,暫間被覆冠にて歯冠形態と咬合関係の改善を行った後,臼歯部はハイブリッド型コンポジットレジンジャケットクラウン,前歯部はオールセラミッククラウンを装着した.
    考察:臼歯部の補綴装置は色調の変化が生じたが上顎前歯部オールセラミッククラウンの色調変化が少ないのは材料物性によるものと考える.上顎左側臼歯部に歯周外科処置を施し,十分な歯冠高径を確保することにより適切な補綴装置を装着できたと思われる.
    結論:補綴装置にオールセラミッククラウンを使用したことにより患者は審美的,機能的にも満足している
  • 和田 誠大
    2013 年 5 巻 2 号 p. 192-195
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は初診時74歳女性で,主訴は顎堤部疼痛による咀嚼困難であった.残存歯による咬合支持が喪失し,すれ違い咬合を呈し,また顔貌より咬合高径の低下が疑われた.また欠損部顎堤の吸収が著明であった.歯周および補綴前処置を行い,旧義歯にて咬合挙上および咬合平面の修正を行った後に,部分床義歯にて咬合を回復した.
    考察:本症例では,義歯の剛性に配慮したこと,またすれ違い咬合であったが,下顎左側最遠心部に歯が残存し,中間欠損化できたことが,早期の咀嚼困難の改善を達成できた要因と考えられる.
    結論:咬合高径の低下ならびにすれ違い咬合に対して,前処置と義歯の設計を適切に行い,良好な咬合機能の回復が図れた.
  • 荻野 洋一郎
    2013 年 5 巻 2 号 p. 196-199
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は54歳の女性.下顎前歯の舌側傾斜による発音障害と上顎全部床義歯の維持不良と審美障害を主訴に来院した.本初診以前に本院矯正歯科で骨格性下顎前突症の診断がなされていた.治療は,下顎前歯の傾斜,形態を審美,発音の観点から設定後,上顎前歯の位置,咬合平面の設定を行った.下顎は歯の傾斜から前歯部と臼歯部に分けて陶材焼付鋳造冠による固定性橋義歯を作製した.
    考察:複雑な問題を有する本症例では機能性,審美性の回復に綿密な治療計画の立案と治療用義歯,プロビジョナルレストレーションが必須であった.
    結論:綿密な治療計画の立案によって骨格性下顎前突を伴ったEichner C2症例における機能性,審美性の回復が可能となった.
  • 塙 総司
    2013 年 5 巻 2 号 p. 200-203
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は73歳の女性で,左側下顎骨辺縁切除術ならびに腹部全層植皮術後の下顎骨部分欠損による植皮部陥凹部への食物の残渣を伴う咀嚼困難を主訴に来科した.ティッシュコンディッショナーを用いて顎欠損部に対する義歯床辺縁・床翼部の形態形成を行ったうえで下顎顎義歯を製作した.
    考察:機能時における頬粘膜と義歯床との間に緊密な接触が得られた結果,食物が植皮部の陥凹部に停滞することは消失し,咀嚼機能が改善したと考えられる.
    結論:植皮部の可動性が欠如している症例に対し,適切な義歯床形態を付与することにより,咀嚼機能を改善し良好な経過を得ることができた.
  • 木下 可子
    2013 年 5 巻 2 号 p. 204-207
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は57歳の女性.上顎左側第一小臼歯の動揺による咀嚼困難を主訴として来院した.重度の歯周病と診断し,スケーリング,ルートプレーニングに加え,下顎部分床義歯装着による咬合支持の確立,咬合平面の修正を行い,その後,メインテナンスに移行した.
    考察:補綴処置終了後も2,3カ月間隔の継続的な義歯の調整と口腔管理が実施されたことにより,現在まで大きな変化なく経過している.
    結論:重度の歯周病患者に対して,適切な部分床義歯を装着し,定期的なメインテナンスを行ったことにより,残存歯の安定した経過を得ることができた.
  • 安陪 晋
    2013 年 5 巻 2 号 p. 208-211
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は60歳の男性で,両側の顎関節雑音と咀嚼障害を主訴に来院した.下顎右側大臼歯欠損部の補綴治療と下顎前方整位および咬合挙上を目的とした治療用義歯を作製した.主訴の改善を確認し,経過観察を行った後,歯冠補綴と部分床義歯による咬合再構成を行なった.
    考察:食事に支障をきたしていた復位性関節円板前方転位症例に対して,下顎前方位での咬合再構成を行い良好な治療経過が得られた.本症例に対する咬合再構成は治療法として適切な選択であったといえる.
    結論:両側性の相反性顎関節雑音症例に対し,咬合挙上と下顎前方位での咬合再構成により,症状が改善した.今後さらに十分な経過観察が必要である.
  • 小林 琢也
    2013 年 5 巻 2 号 p. 212-215
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/08/09
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は73歳の男性,下顎部分床義歯の不適合による咀嚼障害を主訴に来院した.著しい咬耗による歯質の実質欠損によって引き起こされた咬合高径の低下と審美障害の回復を図るため,補綴治療による咬合再構成を行った.
    考察:プロビショナルレストレーションを用い機能的に問題のない下顎位を設定し,長期的に経過観察を行った後に最終補綴装置を製作したことで良好な予後が得られたと考えられる.
    結論:咬耗が引き起こす実質欠損により咀嚼障害と審美障害が認められる症例において,治療開始前に適切な咬合高径を診断し,可逆的治療により咬合高径と歯冠形態を回復し機能回復を確認したうえで最終補綴装置を製作することが重要である.
  • 上野 剛史
    2013 年 5 巻 2 号 p. 216-219
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    症例の概要:患者は57歳女性.上顎右側臼歯部,下顎左側臼歯部の欠損による咀嚼困難を主訴に来院した.欠損を長期間放置したために生じたクリアランスの不足に対し,垂直的下顎位の変更をすることなく,対合歯の形態修正により補綴空隙を確保し,金属床による可撤性部分床義歯を製作した.
    考察:部分床義歯装着により臼歯部咬合支持域の回復が達成され,残存歯の過重負担が改善し,健全な歯周組織の維持が可能になった.また金属床義歯を用いることにより,義歯の異物感を最小限にすることで患者の満足を得られた.
    結論:クリアランスの少ない部分歯牙欠損症例に対し,強度の高い材料を応用した補綴治療を行うことで良好な結果を得ることができた.
  • 池田 亜紀子
    2013 年 5 巻 2 号 p. 220-223
    発行日: 2013/04/10
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    症例の概要:49歳女性.上顎前歯部の審美障害で来院した.下顎両側遊離端欠損による咬合支持の喪失に伴い,当該歯には重度の咬合性外傷が確認できた.そこで咬合支持の回復を優先し,アンテリアガイダンスの再構築を含めた補綴処置を行った.
    考察:咬合支持の回復を優先することで歯周組織は改善し,前歯部をブリッジで補綴することで患者の希望を治療に反映できた.Problem-oriented systemを参考に治療を行うことで機能的にも審美的にも患者の満足を得ることができた.
    結論:アンテリアガイダンスと咬合支持双方に問題がある場合には咬合支持の回復を優先し,プロビショナルレストレーションを用いてアンテリアガイダンスを模索することが効果的である.
原著論文(Secondary Publication)
  • ―(社)日本補綴歯科学会による多施設臨床研究―
    窪木 拓男, 市川 哲雄, 馬場 一美, 秀島 雅之, 佐藤 裕二, 和気 裕之, 永尾 寛, 上田(小平) 順加, 大野(木村) 彩, 玉 ...
    2013 年 5 巻 2 号 p. 224-239
    発行日: 2013/07/10
    公開日: 2013/09/25
    ジャーナル フリー
    目的:(社)日本補綴歯科学会は,補綴治療を行う患者の複雑な多様性を評価し,それをもとに難易度分類を行うことを目的に「補綴治療の難易度を測定するプロトコル」を新たに作成した.本研究では本プロトコルの内容を紹介するとともに,多施設臨床研究により本プロトコルの信頼性を検討した.
    方法:新たに作成した多軸診断プロトコルは,口腔内の形態学的状態,身体社会的状態,口腔関連QOL(OHIP-J54),精神心理学的状態の4つの診断軸からなる.それぞれグレード0(易しい)から3(難しい)の4段階評価を行う.日本補綴歯科学会の認定研修施設である大学病院補綴科5施設で,歯質もしくは歯列欠損に対し補綴治療が必要と判断された初診患者を連続サンプリングした.本プロトコルの妥当性を大規模なコホート研究により検討する前に信頼性の検討をテスト・リテスト法により行った.具体的には,同じ評価を約2週間の間隔をおいて2度行い,その結果の一致度を重み付けカッパ(Kw)値を算出することにより評価した.
    結果と考察:4つの診断軸のうち,口腔内の形態学的状態のテスト・リテスト一致度は,Landis and Koch1)の基準に照らすと「十分な一致」となった(全部歯列欠損群/部分歯列欠損群/歯質欠損群の平均Kw値:0.82/0.73/0.78).さらに,身体社会的状態(0.88),OHIP-J54総得点(0.74),精神心理学的状態(0.61)でも「十分な一致」もしくは「優秀な一致」となった.
    結論:補綴歯科治療の難易度を初めて多軸診断することに成功した本プロトコルは,臨床使用上十分な信頼性を示した.
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