本稿では,日本外傷歯学会の2012年外傷歯治療ガイドラインにそって,その治療方法ならびに臨床成績について考察を試みた.従来の補綴治療の概念で外傷症例に対応すると,抜髄,支台築造,歯冠形成,抜歯,隣在歯を含めた固定性ブリッジまたはインプラントと結果を急ぐことが多い.
ここで紹介したガイドラインの基本的なコンセプトにあるように,外傷症例においては生体組織の治癒能力を最大限利用して可能な限り保存的に対応し,経過観察したうえで,覆髄,接着,挺出,再植などを学際的に組み合わせ,段階的に処置を進める計画を立てることを原則にすすめるべきである.