抄録
症例の概要:患者は59歳女性で,義歯の安定不良による咀嚼困難を主訴に来院した.予後不良の残存歯の抜歯後に残存歯の対咬接触を全て喪失し(Eichner C1),すれ違い咬合となり,下顎はテレスコープ義歯,上顎はクラスプ義歯による補綴処置を行った.
考察:クラスプ義歯では義歯の安定が得にくい下顎にコーヌス・テレスコープ義歯を選択したことで安定が得られ,口腔関連QoLと咀嚼能力が改善し高い患者満足度が得られた.治療3年後において,咬合位と義歯の安定が維持された.
結論:すれ違い咬合に対して,下顎へのテレスコープ義歯と上顎へのクラスプ義歯による補綴は有効である.