日本補綴歯科学会誌
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原著論文
基礎実習における削合用試作四倍大歯冠石膏模型の有用性
-咬合小面の評価-
小池 智子川西 克弥會田 英紀豊下 祥史藤井 法博佐藤 浩一池田 和博越野 寿
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2015 年 7 巻 2 号 p. 161-169

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抄録

目的:本研究の目的は,全部床義歯補綴学基礎実習に人工歯形態を模した四倍大歯冠石膏模型を導入することにより,学生の咬合小面に対する教育効果が得られるか否かについて調査することである.
方法:本研究では,上下顎左側第一大臼歯を再現した天然歯形態(以下:N),ベラシアNCおよびベラシアSAの形態を模した2種類の人工歯形態(以下:それぞれNCおよびSA)の計3種類の試作四倍大歯冠石膏模型を用い,歯学部第4学年68名と第5学年61名に対し,主観的ならびに客観的評価を行った.咬頭嵌合状態および側方咬合状態の位置関係は,4方向の基準点からの距離を測定して評価した.また,咬合小面の形成効率は,削合量に対する咬合小面の面積の増加率から算出した.アンケート調査は試作用石膏模型の主観的評価を分析するために実施した.
結果:第5学年における咬合小面の形成効率は,ベラシアSAが天然歯形態,ベラシアNCと比較して有意に高い値を示した(p=0.001).さらに,第4学年においては,SAを先に削合した学生の咬合小面の形成効率が,SAと比較してNCで有意に高い値を示した(p<0.001).アンケート結果では,多くの学生がSAはNCと比較して操作性が良いとの回答が得られた.
結論:人工歯形態を模した試作四倍大歯冠石膏模型を用いた削合実習は,従来の天然歯形態を模した模型と比較して咬合小面の教育に役立つことが示唆された.

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© 2015 社団法人日本補綴歯科学会
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