2017 年 9 巻 3 号 p. 263-266
症例の概要:患者は70歳の女性で,上顎義歯不適合および下顎歯列欠損による咀嚼困難を主訴として来院した.術前検査より,低位咬合と診断し,オクルーザルスプリントと治療用義歯を用いて咬合挙上を行った後に,最終補綴装置として金属床義歯を装着した.
考察:オクルーザルスプリントと治療用義歯の応用により患者の咬合挙上への馴化を促すとともに,顎口腔機能の調和を獲得したことで,最終義歯への移行が円滑に行えたと考えられる.
結論:3年経過時の客観的・主観的咀嚼機能評価は良好であり,口腔関連QOL(OHIP-14)の値も治療用義歯装着時と比較して改善していることから,本症例の治療法が有用であったことが示唆された.