日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-144
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二酸化チタンの気管内投与による生体影響:投与回数の違いによる比較
*鈴木 正明加納 浩和山崎 一法近藤 ひとみ戸谷 忠雄齋藤 美佐江妹尾 英樹相磯 成敏福島 昭治
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抄録
【目的】ナノ材料の有害性情報取得のための低コスト・簡便な有害性評価技術を構築するため、二酸化チタン(TiO2: P25)を用いて、単回から複数回の投与群を設け、生体反応の差異を検討した。【方法】12週齢のF344雄ラットに、TiO2を気管内に1匹あたり10 mg/kgを1回投与する群、10mg/kgを複数回(5 mg/kgを2回、3.3 mg/kgを3回、2.5 mg/kgを4回:各群とも隔日に投与)に分けて投与する群、各溶媒対照群及び無処置群を設けた。動物飼育期間中は動物の状態観察、体重測定を行った。最終投与後3、28及び91日目に動物を解剖し、3と28日目には気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、総細胞数、細胞分類の測定及び生化学的検査を行った。28と91日目には血液学的検査、血液生化学的検査、臓器重量の測定と病理組織学的検査を行った。【結果】各群とも順調な体重増加を示したが、28日目以降は無処置群と比較して、溶媒対照群と投与群に軽度の体重増加抑制がみられた。BALFの検査では、3日目のTiO2投与群で炎症と細胞傷害を示すパラメーターの増加が認められたが、28日目では、これらの値は減少し、ほとんどの項目で溶媒対照群と比較して差はなくなった。肺重量は28日目でTiO2投与群に高値が認められた。病理組織学的検査では28日目にTiO2投与群で肺胞Ⅱ型上皮の過形成、肺胞においてはTiO2を貪食したマクロファージの出現、気管支関連リンパ組織とリンパ節(後縦隔リンパ節、傍胸腺リンパ節)においては粒子の沈着が認められた。また、91日目の投与群には脾臓に粒子の沈着が認められた。【結論】3日後のBALFを用いた検査では、投与回数の少ない方が強い炎症反応を示す傾向があった。しかし、28と91日目では各検査結果に投与回数による差は認められなかった。なお、無処置群と各溶媒対照群の間にも差は認められなかった。
(本研究は経済産業省からの委託研究「ナノ材料の安全・安心確保のための国際先導的安全性評価技術の開発」による研究成果である。)
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© 2012 日本毒性学会
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