2017 年 9 巻 3 号 p. 267-270
症例の概要:患者は,65歳男性で,上顎前歯部が動揺してかめないことを主訴に来院した.診査の結果,上顎前歯部の動揺ならびに義歯の維持,安定不良による咀嚼障害と診断した.最終補綴装置として,オーバーデンチャー(全部床義歯)を用いることで,長期的な残存歯・顎堤の保全と安定した機能の維持を目指した.
考察:オーバーデンチャーは,支台歯の予後が不安な場合,歯冠歯根長の改善や顎堤の保全が期待できるなどの利点がある.本症例では,オーバーデンチャーにより残存歯の負担軽減を図ったことが良好な結果につながったと考えられる.
結論:多数歯欠損において支台歯の予後が不安な場合,オーバーデンチャーとすることは有効である.