抄録
目的 食生活は個人のライフスタイルの変容とともに変化し,家庭での食事の調え方も多様化してきている。食生活関連の数多くの研究報告書でも指摘されているように,家庭の味や伝統的な調理法などの次世代への伝承が薄れていることが懸念されている。
そこで,現在,熊本における家庭内での調理方法はどのような実態にあるのか,また食生活はどのような生活意識のもとに営まれているのかを,10年余り前に実施した調査結果との比較から,その実態と動向を探ることを目的に調査を実施した。
方法 調査対象は中学生の保護者で,熊本市内489人及び天草地域375人であった。調査時期は2000年11月と2001年7月で,質問紙留置調査法で実施した。
調査項目の調理方法は,食品素材や調理操作法を考慮し手作りから加工食品類の使用度に応じた5段階に分類し,料理例15品目について食事作りでよく行う調理方法について回答させた。調査結果は地域別,属性別に集計し,先行研究の結果と比較し経時的な変化についても分析した。
結果 家庭内での調理方法は,いずれの地域も素材から手作りする方法と市販の調味料類を一部で利用する手作りの割合が高く,加工度の高いインスタント食品を利用した調理方法や市販の総菜の利用は意外と低かった。また,料理品目により調理方法の地域差がみられた。家族形態別では拡大家族が核家族よりも,食事作りに要する調理時間別では調理時間が長いほど,手作り度が高い傾向であった。経時的変化をみると,熊本市内では手作りは減少したが,天草地域では大差なかった。調理時間はいずれの地域も短縮化傾向であった。