日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成15年度日本調理科学会大会
セッションID: 2A-p8
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鶏卵泡沫の全量を乳精泡沫に置き換えたスポンジケーキの調製
---鶏卵アレルギー患者を対象とした----
*楠瀬 千春藤井 淑子
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抄録

目的カップケーキ・スポンジケーキのような気孔構造を有する焼き菓子は、基本的に卵泡沫を加熱膨張させ、小麦粉含有澱粉の糊化によりスポンジ状の組織を固定化して調製される。近年、増加傾向にある食物アレルギーのうち、鶏卵アレルギー患者を対象とし、鶏卵食物アレルギー疾患用ケーキを調製することを目的とした。そのために、鶏卵泡沫の全量を牛乳由来の乳精(ホエー)泡沫に置き換えてスポンジケーキを調製した。
方法乳精(ホエー)の成分は、乳糖76.4、たんぱく質12.5、水分2.62%(雪印製菓原粉K)。ホエー100gとイオン交換水100gを40℃に加温し、溶解しながらハンドミキサー(NationalMK-2000)で攪拌して泡沫(フォーム)を得た。泡沫の安定性、伸張性を増大させるために、ホエー溶液の液温、攪拌条件、添加材料(水、蔗糖)の配合量を検討した。この泡沫に薄力粉を添加した生地(バッター)をオーブンで焼成し、粉の配合量、焼成条件を検討した。焼成後のスポンジ組織の形成状態をSEM観察し、官能評価した。
結果ホエー泡沫は、鶏卵泡沫に比較して滑らかで安定性が高く、少量の蔗糖添加すると、これらの性状は更に向上した。鶏卵泡沫は、時間経過に伴って離水量が増加するが、ホエー泡沫は3時間経過後も離水を起こさなかった。カップケーキには密度0.30g/mlが最適な泡沫であったが、この密度を0.22g/mlまで下げることにより、12cm径のスポンジケーキの焼成が可能となった。しかし、このスポンジケ-キの膨化率は小さく、ホエー泡沫の膨張力は、鶏卵泡沫に劣ることを示している。生地の膨張力を助長するために薄力粉配合量の減量、焼成温度と時間の条件などを検討し、鶏卵スポンジケーキに匹敵する値を得た。

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© 2003日本調理科学会
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