抄録
日本の諸文化が東西に大きく分けられることは、広く認められていることであり、食文化も例外ではない。特に、「食」がその風土に強く影響を受けることを考慮すると、より顕著に東西の違いが現われるものと推察される。なぜならば、日本列島の西東はすなわち南北となるので、風土にとって重要因子である気温の影響を強く受けるからである。
東西の対立の例を二つ図示する(図省略)。一つは、食文化以外のものとして「居る」方言の分布であり、次は有名な雑煮餅の形、□と○の分布である。前者の「いる」「おる」を分けるラインが新潟県あたりに位置すること、後者で庄内・佐渡・能登が○になっていることに惹き付けられた。この分布図(図省略)から、日本海上に佐渡島を持つ新潟県はかなり興味ある位置にあることにヒントを得て、主に日本海側における日本の食文化の東西という問題について調査研究を始め、現在に至っている。
しかし、雑煮の餅がなぜ西が丸で東が四角であるか?納豆はなぜ東の食文化なのか?というような問題は大き過ぎて、手に負えないままである。
以下、考察はできるだけ抑えながら、食文化の東西について調査の過程から得られたものに「聞き書」(農文協)という全国的データを加えた、具体的事例とその背景について紹介していきたい。例えば、正月魚としてのサケとブリ、昆布巻の芯魚、納豆、味噌、食用菊、枝豆、サルトリイバラ団子と柏餅、ナスとカブの名前など。
また、日本海側に立地する新潟の立場から、日本海沿岸特有の食文化および、新潟独自の食文化についても紹介する。例えば、イゴグサの練り物、「いずし」、節句の三角粽に笹団子、「のっぺ」、新潟県・村上のサケの食文化など。