抄録
目的 魚離れが取りざたされて久しい。しかし一方では、魚介類が健康食として見直されていることも事実である。本研究では健康意識が魚介類の食習慣に及ぼす影響を探った。
方法 日本調理科学会特別研究の「魚介類の調査」に加え、魚介類に対する嗜好、知識、調理技術習得方法,情報源、健康意識の有無などについてアンケート調査を実施した。調査対象者は岡山県7市町村に居住する主婦(30歳代から70歳代)116名であった。
結果 (1)104種類の魚介類があげられたが、使用率が70%以上をしめたものは、アジ、サケ、サバ、サワラ、イワシ、ブリ、アナゴなど限られた15種類であった。(2)魚介類の料理は2563例で、焼物34%、煮物22%、揚物15%で全体の70%以上をしめ、瀬戸内海のサワラやアナゴを使ったすし類や酢物などの伝統料理は中高年層に比較的利用が多かった。(3)魚介類を食べる際に健康を意識している41%、どちらかといえば意識している44%、意識してない15%で、若年層より中高年層の主婦に健康を意識している割合が高かった。(4)魚介類の栄養成分や機能に関する専門知識は、健康を意識している層の方に高い傾向が認められ、その情報源としてテレビ、新聞、料理雑誌などのメディア関連が67%をしめた。(5)魚を食べる日数はいずれも週に4日前後で差は認められず、使用する魚介類は25.4種類と32.3種類、料理事例数は36.7事例と42.1事例で、いずれも健康を意識していない層に多種類の魚介類と料理事例が認められた。
以上の結果から、健康ブームのなかでメディアを通して魚介類に関する専門知識がふえ健康意識が高まっているものの、使用する魚介類の種類や料理法の選択範囲は広いとはいえず、定型化した魚食の実態が示唆された。