日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成18年度日本調理科学会大会
セッションID: 2D-a1
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口頭発表
0℃以上の寒温による保存は刺身素材の「活き」の状態を持続させる?
*原田 和樹川本 裕夏嶋田 寛前田 俊道福田 裕伊藤 信夫戸村 啓二
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抄録

【目的】魚介類の「活き」とは、死直後から完全硬直に至るまでの期間とされ、活魚と同等の価値があると言われている。従って、鮮度指標K値が20%以下で完全硬直を遅延させれば、刺身素材としては、「活き」の良い最も価値あるものになる。大分大学の望月らは、関アジ・関サバで5℃あたりの寒温で保存すると「活き」の状態が持続する事を報告したが、我々は、他の魚種でも同様の結果が得られるのかどうか調べた。また、流通中に0℃以上の一定の寒温状態を作り出す事は困難を伴うが、我々は寒温状態を作り出す新しい保冷剤を開発したので、ここに報告する。
【方法】使用魚種は、ヒラメ、マコガレイ、山口県の瀬付きアジを用いた。試料は、延髄刺殺による活け締め処理を行い、各貯蔵温度区は、0℃、4℃、8℃、12℃とした。死後変化の指標は、HPLCによるK値変化並びにATP核酸関連物質量の変化、硬直指数R値の変化、レオメータによる破断強度の変化などを用いた。
【結果】瀬付きアジは、関アジの結果と異なり、0℃保存に比べて、4、8、12℃保存で硬直の遅延は認められなかった。しかし、マコガレイでは8℃保存で若干の硬直遅延が、ヒラメでは8℃保存で18時間という顕著な硬直遅延が認められ、完全硬直時のK値は15%以下であった。そこで、我々は、0から12℃に融点を持つ保冷剤の開発を試み、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)等の水和物を利用する事で成功した。近い将来、0℃以上の寒温の保冷剤を流通に使用する事により、家庭では「活き」の良い刺身素材を調理できる様になるだろう。本研究は、農林水産省「地域食料産業等再生のための研究開発等支援事業」の一環として実施された。

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