抄録
【目的】
 日本の文化が変わりゆく中で、食の面においても食形態や食嗜好が変化し郷土料理の衰退が懸念されている。また、子供たちへの食育が盛んに行われている現在、学校給食の役割が大きく見直され、食文化継承の面からみても大きな期待が持たれている。そこで、学校給食で提供される郷土料理に着目し、その内容から学校における食文化継承の現状を把握するとともに今後の方向性を推察することを目的とした。
【方法】
 2001年度全国学校総覧に記載されている小学校と中学校計900校を無作為に抽出し調査対象とした。調査時期は2001年7月から9月であり、質問紙を各学校栄養職員宛に郵送し、無記名の自記式アンケート調査を行った。調査項目は学校給食においての郷土料理提供の有無、実際に取り入れた郷土料理の内容、郷土料理を取り入れる理由、地域との協力の有無等とした。統計学的な解析にはエクセル統計およびSPSSを用いた。
【結果】
 回答が得られたのは小学校587校、中学校191校、合計778校であり、回収率は86.4%であった。そのうち722校のデータを分析した。学校給食で郷土料理を提供している学校は78.0%であった。実際に給食で提供されている郷土料理名は528校から回答が得られ802種類の郷土料理名があげられた。最も多く提供されていた郷土料理は北海道の石狩汁であり、北海道以外の多地域での提供がみられた。郷土料理を提供する理由は「住んでいる地域の郷土料理に関心を持たせるため」が79.5%と最も高い一方で「日本各地の郷土料理を伝えるため」も52.1%と3番目に高かった。以上の結果より小学校中学校における食文化の継承は地域を越え、全国的な平準化傾向が伺えた。