日本調理科学会大会研究発表要旨集
創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
セッションID: 2B-p9
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口頭発表
ムクナ属マメの調理性に関する研究 (第3報)
浸漬温度とL-DOPAの溶出
*飯島 久美子奥山 綾子藤井 義晴香西 みどり
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抄録


【目的】
 ムクナ属マメは窒素固定能が優れ、やせた土地でも育ち、極めて多収であるという長所があるが、常温では吸水が悪く、L-DOPAを多量に含むという改善すべき点も持つ。L-DOPAは多量摂取により下痢嘔吐を起こす場合があるため、食用とするには豆のL-DOPA量を低減することが必要である。本研究ではムクナ属マメの和名であるハッショウマメの吸水特性を向上させ、L-DOPA量を減少させる浸漬、加熱条件を明らかにすることを目的とし、あわせてあんおよび粉末での利用についても検討した。
【方法】
 試料はハッショウマメを用いた。浸漬温度は20,40,50,60,70,80,90,99.5℃(沸騰水)とした。茹で加熱は水の取り換え回数を1または2回、茹で時間は10~60分とし、浸漬処理と茹で加熱を組み合わせた。それぞれの浸漬液、茹で汁、茹で豆のL-DOPA量をHPLCにより測定した。茹で豆から調製したあんおよび生豆または煎り豆粉末の粒度分布および試料調製時の水さらし回数を1~6回まで変えてL-DOPA残存量を測定した。
【結果】
 浸漬温度が高いほど試料豆の吸水速度が速くなり、吸水率は上昇した。99.5℃浸漬では吸水が十分におこる前に組織の崩壊が起り、茹で加熱には適さなかった。同程度の吸水率で比較すると浸漬温度が高いほど、L-DOPAは浸漬液に溶出する傾向が見られた。同一温度では時間が長いほうが溶出量は多かった。煮豆として適度な調理条件とされた90℃4時間浸漬後40分間茹で加熱の場合はL-DOPA量が9.09mg/g(生豆)となり、生豆の約1/5に減少した。あんおよび生豆または煎り豆粉末では、3回水さらしすることで生豆の1~2%までL-DOPA量は減少した。

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© 2007日本調理科学会
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