日本調理科学会大会研究発表要旨集
創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
セッションID: 2C-a6
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口頭発表
ニンジンの加熱軟化が甘味に与える影響
*堀江 秀樹平本 理恵
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抄録


【目的】
 生活習慣病予防のため野菜の摂取が重要とされる一方で、野菜の需要は伸び悩んでいる。演者らは、野菜消費の拡大のため、家庭でも簡単に野菜のおいしさを引き出せる調理法の開発に取り組んでいる。その中でニンジンは蒸気加熱することで甘味が増すことが観察された。そこで、この甘味増強のメカニズムについて考察した。
【方法】
 3月初中旬に大阪市内の市場で購入した鹿児島県産のニンジンを材料にした。厚さ1cmの輪切りとしたニンジンを家庭用過熱水蒸気オーブン(シャープ製ヘルシオHC3)で蒸し加熱した。加熱時間は0、10、20、30分に設定した。ニンジンの硬さは直径3mmの円筒状プランジャーを使用し、破断荷重を測定して評価した。直径8mmのプランジャーを用いて、試料中に貫入しない程度の一定の力を30秒間かけた時に滲出する液の重量を、ろ紙にしみこませて測定し滲出エキス量とした。また、試料に一定量の水を加えて実験用ミキサーで破砕し、濾液をキャピラリー電気泳動法で分析して糖含量を測定した。同様に調製した試料について、「硬さ」、「甘味」「シューシーさ」について官能評価した。パネルは20代から40代の男女11名とした。
【結果と考察】
 官能試験の結果、加熱時間に伴い有意に「硬さ」の減少が観察され、機器による評価も一致した。一方で「甘味」は加熱時間とともに増加する傾向にあった。甘味に関係する糖含量や組成については、加熱0分から30分の間で差違は観察されず、甘味の増加は遊離糖の増加に起因するものとは考えられない。一方で、滲出エキス量は加熱時間とともに増加し、軟化に伴い溶出され易くなったエキスの増加が「甘味」に影響したものと考察される。

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