抄録
【目的】
飽食の時代といわれる現代にあって、生ゴミの排出量が増大している。これに対して、生ゴミを資源として生かしていこうとする考えのもと、堆肥化が各地で試みられている。堆肥を用いて栽培された野菜は、食味が良い、日持ちすると言われているが、その詳細は明らかにされていない。そこで本研究では、埼玉大学生ゴミリサイクル事業で製造した堆肥を用いて野菜を栽培し、その食味の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
カブ、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、エダマメ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、ハクサイ、ホウレンソウ、コマツナを、学内生ゴミリサイクル事業で製造した堆肥と市販の化成肥料を用いて、埼玉大学教育学部附属農場でポットまたは農地で栽培した。栽培は2004年より、継続的に行っている。収穫物について、その呈味の特徴を知るために、ビタミンC、グルタミン酸、糖、有機酸を定量した。あわせて官能検査によって、呈味の特徴・品質の評価を得た。
【結果】
収量、外観の差は、一部の野菜を除き、大きくはなかった。虫食いは、堆肥栽培野菜に多くみられた。食味は、どの野菜でも、堆肥で栽培した野菜のほうが化成肥料で栽培したものよりすっきりとした味がする、後味の悪さがないと評価され、総合的においしいと評価されたものが多かった。成分分析の結果、ピーマン、ジャガイモ、ハクサイ、コマツナでは化成肥料栽培のものより堆肥栽培のもののほうがグルタミン酸が多く含まれていた。糖量の差は小さかった。ビタミンC量に差はなかった。