【目的】
循環器系疾患予防の見地から、日本人には食塩摂取量の減少が必須であるが、食物の塩味減少は、おいしさを著しく低下させる。そのため、おいしさの低下を防ぐ減塩方法として、調理にだしを効かせる方法が知られている。これは、うま味物質の減塩効果に基づいているが、本研究室では鰹だしに含まれるうま味物質以外の風味成分にも塩味減塩効果があることを明らかにした。そこで、本研究では、鰹だし固有の味に着目し、その減塩効果を検討した。
【方法】
20歳代前半の女性被験者61名に、においを遮断するためにノーズクリップを装着してもらい、試料としてうま味強度を0.12%にそろえた枯節だし、荒節だし、MSG溶液を用い、塩分濃度を0.67~0.94%の5段階に調整したものを0.80%NaCl溶液とそれぞれ組合わせ、2個の試料で塩味の強いものを選択してもらった。また、どちらの塩味強度を好ましく感じるかについても回答してもらった。
【結果】
塩味強度に関する官能評価結果をプロビット法により解析した結果、枯節だし・荒節だしともに塩味増強効果が認められた。同じうま味強度のMSG溶液には塩味増強効果が認められなかったことから、この効果は鰹だし固有の味に由来すると考えられる。また、好ましさの評価においても、鰹だしには、顕著においしさを向上させる効果が認められた。特に枯節だしは、食塩濃度の高低に関わらず、おいしさを向上させた。以上の結果より、鰹だしに含まれるうま味物質以外の呈味物質もだしの減塩効果に寄与していることが明らかになった。