抄録
【目的】
大豆は多様な機能性成分を含んでおり、その健康機能が注目されている。インドネシアの伝統的大豆発酵食品であるテンペは、大豆の持つ優れた栄養成分が損なわれず保持されており、消化吸収性も向上すると言われている。また、ビタミンB群やビタミンEなどが増加することも報告されている。一般的にテンペの製造は脱皮大豆を用いるが、本研究では大豆の表皮がもつ生理的機能を有効的に活用するために、表皮を除去せずにテンペを製造する方法を検討した。さらにテンペの機能性に関する知見を得るために、大豆の品種や発酵日数の違いによる抗酸化性への影響について調べた。
【方法】
テンペ菌はRhizopus oligosporusを使用し、原料大豆として、ツルムスメ(北海道産)、サチユタカ(以下、広島県産)、油木在来、きなこ大豆を用いた。テンペの製造方法は、まず大豆を水または各種有機酸溶液に一晩浸漬後、鍋またはオートクレイブで煮るもしくは蒸煮を行った。次にスターターを添加し、28~30℃で1~4日間発酵させた後、製造したテンペの水分含有量、全タンパク質含有量及び抗酸化性の測定を行った。
【結果】
製造方法を検討した結果、大豆をリンゴ酸溶液に浸漬し、オートクレイブで5分蒸煮したものが、テンペ菌の発育がよく食味も良好であった。品種の違いによるテンペの抗酸化性は、油木在来が最も強い活性を示すことが確認された。また、ツルムスメ・サチユタカでは、発酵日数が増加すると抗酸化性が低下していたが、油木在来・きなこ大豆は、発酵日数2日目において抗酸化性が最も強く、培養日数3日目以降は減少していくことが認められた。