抄録
【目的】
電子レンジはさまざまな調理が可能であるにもかかわらず、一般家庭において温め以外にあまり使用されていない。これには電子レンジ調理品の出来上がりに対する疑問が影響していると考える。そこで肉じゃが調理におけるジャガイモに着目し、電子レンジ調理品とガス調理品を比較検討することによって、電子レンジ調理品の特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
肉じゃがの材料にはジャガイモ(2.5cm×2.5cm×3.0cmの直方体)、人参、玉葱、しらたき、牛肉を使用し、調味液として濃口醤油、酒、砂糖、水、おろししょうがを使用した。電子レンジ調理とガス調理では全ての材料、調味料を同重量とし、ガス調理のみ加水量を増量したが出来上がり重量をそろえた。調理後のジャガイモについて、体積、色(写真による画像解析)、外側と中心部の塩分濃度、物性(クリープメーター)を測定し、外側と中心部の顕微鏡観察(走査電子顕微鏡)および官能検査(2点比較法)を行った。
【結果】
電子レンジ調理品はガス調理品に比べ、ジャガイモの体積は減少し、写真による画像解析では色が薄いことが明らかとなった。中心部・外側共にガスに比べ塩分濃度が薄く、中心部への塩分浸透割合も低かった。破断荷重に差がないもののもろさ変形が大きく、ガスに比べねっとりとしていると考えられ、官能検査の結果でも有意にホクホク感がないと判断された。顕微鏡観察の結果、ガスでは内部の細胞は丸みを帯びて一つ一つ形状を保っているのに比べ、電子レンジではしわが多く細胞膜が崩れて細胞同士がくっついて大きくなっており、この細胞の崩壊が食感に影響を及ぼしていることが示唆された。