日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成20年度日本調理科学会大会
セッションID: 2D-2
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口頭発表
伝統的なスローフードのカタクチイワシ塩辛「エタリの塩辛」が持つ抗酸化能
*竹下 敦子有吉 みよ子原田 和樹前田 俊道長谷川 喜朗福田 裕和仁 晧明小泉 武夫
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抄録

【目的】
 明治時代からの伝統食品として、長崎県雲仙市には、長崎半島と島原半島に囲まれる橘湾で水揚げされるカタクチイワシで作った塩辛「エタリの塩辛」がある。我々は、これまで「エタリの塩辛」をベースにしたパスタ用ソースなど新しい調理素材を開発して来た。また、「エタリの塩辛」は、イタリア・スローフード協会の「食の世界遺産」と称される「味の箱舟」計画に登録された。今回は、「エタリの塩辛」が持つ健康増進機能を、指標に抗酸化能を用いて調べた結果を報告する。
【方法】
 試料は、約3か月間発酵させた「エタリの塩辛」を、2g/20ml蒸留水の条件にてポリトロンで破砕して、その水抽出液を原液として用いた。抗酸化能の測定は、米国農務省が推奨するペルオキシラジカル消去活性能を示すORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法と、ヒドロキシルラジカル捕捉活性能を測定できる電子スピン共鳴(ESR)法で行った。ORAC法の単位はµmol Trolox当量/100gであり、ESR法によるIC50値(コントロールのラジカル相対比を半分にする量)の単位は原液に対する%濃度で示した。
【結果】
 「エタリの塩辛」のORAC値は8667であり、「エタリの塩辛」の液汁と同系統であるカタクチイワシを漬け込んだ魚醤「しょっつる」が示す抗酸化能に比べて遙かに高い値を示した。また、ESRで測定したIC50値は1.48であり、ヒドロキシルラジカル捕捉活性能も「しょっつる」に比べて高い能力を示したが、ORAC値の増大の程度の方が大きい事が示唆された。従って、抗酸化能の観点からも、「エタリの塩辛」は「しょっつる」と異なり高い抗酸化能を持つと推定した。
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© 2008日本調理科学会
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