【目的】 今回の日本調理科学会の共通テーマは行事食である。初回のいも・まめ調査および魚料理調査に参加した時の担当地域は福岡県八女地区であった。特に奥八女星野村ではいも饅頭・さば寿司をはじめそばがき・ちまきなどを、今でも受け継がれている家庭の姑とお嫁さんに再現して頂いた。今回も行事食調査と平行して古の正月料理を再現して頂いた。
【方法】 星野村滝の脇に嫁いで60年になる姑と30年になる嫁に、昔の雑煮や煮しめを作って頂き正月行事を聞き取った。行事食については星野村の正月の項目のみについて集計を行った。
【結果】 正月料理は現在も作り継がれている自家製野菜と行商人から手に入れた塩鰯、自家で絞めた鶏肉、頂き物の猪肉で作られた。今回雑煮、野菜煮物、酢の物、黒豆を作って頂いた。雑煮は丸餅と里芋だけの簡素なものであった。里芋は昔から山の焼畑で作られていた水分の少ない美味しい芋であった。この里芋でいも饅頭も作られた。煮物はれんこん、自家製こんにゃく、干し椎茸、厚揚げ、人参、巻き昆布、ごぼう、つくね芋の8品を大きく切って大鍋で煮込み一緒に盛り合わせる。天盛りに百合根を飾ったという。
正月には今でも荒神様(火の神)と神棚の正月飾りは欠かさず行われる。各部落には氏神様が祭られ、正月にはお参りする。
行事食調査アンケートの正月の項目についてまとめた結果は、星野村では雑煮はすまし仕立て、丸餅を焼かないが主流であり、古のやり方同様であった。中具については変化していた。お節料理の黒豆、煮しめは90%以上が毎年食し手作りであった。正月での赤飯の喫食経験、田作りの毎年の喫食は50%程度であった。